渋谷区で9年前に作られてLGBTQの社会的な受容に一石を投じた「多様性社会推進条例(正式名称: 渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例 」が、包括的な人権(こどもとか外国人とか多様な人権も含む、という意味)を尊重する条例に変わりました。




資料として全文をテキスト打ちして掲載しておきます。なおまだ議会で決定されていないので「全部改正する」みたいな文言もありますけどご容赦ください。




大きな特徴/変化




  • 渋谷に関わる人をひとまとめに「渋谷民」という言葉に定義し、権利と努力義務を課した
  • 性の多様性に重点が置かれがちだったが、対象を拡大しこどもや高齢者、あるいは外国にルーツを持つ方なども対象とした
  • パートナーシップ証明を同性要件を撤廃し、異性間でも利用できるようにした(例えば夫婦別姓とか)



条例本文




議案第8号 渋谷区人権を尊重し差別をなくす社会を推進する条例




渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例の全部を改正する。




目次

前文

第1章 総則(第1条-第8条)

第2章基本的な施策(第9条-第14条)

第3章個別的な人権課題に対する取組

 第1節ジェンダー平等に関する取組(第15条-第20条)

 第2節子ども、高齢者、障害者及び本邦外出身者に関する取組(第21条-第26条)

第4章渋谷区人権を尊重し差別をなくす社会を推進する会議(第27条)

第5章雑則(第28条・第29条)

附則




前文

すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。これは、世界人権宣言にうたわれている人類普遍の原理であり、また、基本的人権を侵すことのできない永久の権利として全ての国民に保障する日本国憲法の理念とするところである。この理念の下、誰もが個人として、一人ひとりかけがえのない存在であると互いに認め合い、いかなる差別も受けることがなく、自分らしく生きることに誇りをもち、2 他者の人権に対しても尊重することができる社会を築くことが、私たち渋谷民の願いである。本区では、これまで男女平等・多様性社会推進行動計画を策定するなど、人権尊重の理念と人々の多様性への理解推進に向けて積極的に取り組んできた。しかしながら、依然として、多様性に関する理解が十分ではないこと、人種、国籍、信条、性のありよう、障害、年齢、出身地、経歴等による偏見や差別が存在しており、生きづらさを抱える人々への支援が必要な状況にある。さらに、これらの要因が重なることで起こる特有の差別に関しても問題となっている。よって、ここに区、渋谷民及び事業者が、それぞれの責務を果たし、互いに人権を尊重し合い、支え合うことで、偏見や差別なく自分らしく生きることのできる社会を推進し、もって多様性を認め合う社会を実現するために、区はたゆみなく努力し続けることを決意し、この条例を制定する。




第1章 総則




(目的)

第1条 この条例は、渋谷区多様性を認め合う社会を推進する条例に規定する多様性を認め合う社会の実現に不可欠な人権の尊重について、渋谷区(以下「区」という。)、渋谷民及び事業者の責務を明らかにするとともに、区の施策の基本的事項を定めることにより、その施策を総合的かつ計画的に推進し、もって多様な個人を尊重し差別のない社会の実現を図ることを目的とする。




(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1)渋谷民 区に住む人、区で働く人、区で学ぶ人、区を訪れる人その他の区に関わる様々な人をいう。

(2)事業者 区内において事業活動を行う法人その他の団体又は個人をいう。

(3)性のありよう 身体的・生物学的な性、性自認、性的指向及びジェンダー表現を要素とした全ての人が持っている性のあり方をいう。

(4)暴力 身体に対する不法な攻撃であって生命若しくは身体に危害を及ぼすもの又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。

(5)ハラスメント 他者に対する発言、行動等が、本人の意図に関係なく、相手や周囲のものを不快にさせ、尊厳を傷つけ、不利益を与え、又は脅威を与えることをいう。

(6)ジェンダー 平等全ての人が性のありようによって社会的に排除されることがない状態をいう。

(7)パートナーシップ 婚姻関係と異ならない程度の実質を備える2者間の社会生活関係をいう。

(8)障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」という。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

(9)社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

(10)本邦外出身者 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に規定する本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するものをいう。




(基本理念)

第3条 区は、次に掲げる基本理念にのっとり、人権を尊重し差別をなくす社会を推進するものとする。

(1)誰もが自分らしい生き方を追求できること。

(2)誰もが互いを個人として尊重すること。

(3)誰もが互いに助け合うこと。




(区及び公共的団体等の責務)

第4条 区は、前条の基本理念に基づき、人権を尊重し差別をなくす社会を推進する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。

2 区は、人権を尊重し差別をなくす社会を推進するに当たり、職員の行動指針を策定するものとする。

3 区は、人権を尊重し差別をなくす社会を推進するに当たり、渋谷民、事業者、国及び他の地方公共団体その他関係団体と協働するものとする。

4 国、他の地方公共団体、法令により公務に従事する職員とみなされる当該職員の属する団体、その他公共的団体(以下「公共的団体等」という。)の区内における事業所及び事務所は、区と協働し、人権を尊重し差別をなくす社会を推進するものとする。




(渋谷民の責務)

第5条 渋谷民は、社会のあらゆる分野の活動において、人権を尊重し差別をなくす社会を推進するよう努めるものとする。

2 渋谷民は、区が実施する人権を尊重し差別をなくす社会を推進する施策に協力するよう努めるものとする。




(事業者の責務)

第6条 事業者は、区が実施する人権を尊重し差別をなくす社会を推進する施策に協力するよう努めるものとする。

2 事業者は、採用、待遇、昇進、賃金等における就業条件の整備において、この条例を遵守しなければならない。

3 事業者は、職場環境の整備、長時間労働の解消等に努めるものとする。




(禁止事項)

第7条 何人も、人種、国籍、信条、性のありよう、障害、年齢、出身地、経歴等を理由とした差別を行ってはならない。

2 何人も、いかなる暴力及びハラスメントをしてはならない。

3 何人も、区が実施する人権を尊重し差別をなくす社会を推進する施策を不当に妨げる行為をしてはならない。




(表現の自由等への配慮)

第8条 この条例の適用に当たっては、表現の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由及び権利を不当に侵害しないよう配慮しなければならない。




第2章 基本的な施策




(施策の推進)

第9条 区は、関係する区の機関が必要に応じて連携できる体制を整備することにより、人権を尊重し差別をなくす社会を推進する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。

2 区は、人権を尊重し差別をなくす社会の推進のために必要と認めるときは、個別の課題に関する行動計画を策定し、公表するものとする。




(啓発等の推進)

第10条 区は、人権を尊重し差別をなくす社会を推進するため、前条の施策に基づき、教育、啓発等を推進するものとする。

2 区は、人権を尊重し差別をなくす社会の推進のために、多様な情報発信媒体からの情報を各人が能動的に解釈し、自ら適切に発信する能力を育成するものとする。

3 区は、複数の要因が重なることで起こる特有の差別への対応を行う。

4 区は、災害その他緊急事態の発生時においては、特に人権を尊重するため、差別を助長し、又は誘発するおそれのある風説の流布の防止のために必要な措置を講ずることに努めるものとする。




(拠点施設)

第11条 区は、人権を尊重し差別をなくす社会を推進するため、渋谷インクルーシブシティセンター条例第1条の渋谷インクルーシブシティセンターを拠点施設とする。

2 区は、前項に規定する施設において、第13条に規定する相談又は苦情への対応のほか、条例の趣旨を推進する事業を行うものとする。




(情報保障)

第12条 区は、区のあらゆる施策において、受け手に合わせた伝達方法の選択により、円滑な意思疎通を図ることに努めなければならない。




(相談及び苦情への対応)

第13条 渋谷民及び事業者は、区長に対し、この条例及び区が実施する人権を尊重し差別をなくす社会を推進するための施策に関して相談を行い、又は苦情の申立てを行うことができる。

2 区長は、前項の相談又は苦情の申立てがあった場合は、必要に応じて調査を行うとともに、相談者、苦情の申立人又は相談若しくは苦情の相手方、相手方事業者等(以下「関係者」という。)に対して適切な助言又は指導を行い、当該相談事項又は苦情の解決を支援するものとする。

3 区長は、前項の指導を受けた関係者が当該指導に従わず、この条例の目的及び趣旨に著しく反する行為を引き続き行っている場合は、推進会議(第27条でいう「渋谷区人権を尊重し差別をなくす社会を推進する会議」をいう。)の意見を聴き、当該関係者に対して、当該行為の是正について勧告を行うことができる。

4 区長は、関係者が前項の勧告に従わないときは、関係者名その他の事項を公表することができる。




(顕彰)

第14条 区は、人権を尊重し差別をなくす社会の推進について、顕著な功績を上げた個人又は事業者を顕彰することができる。




第3章 個別的な人権課題に対する取組

 第1節 ジェンダー平等に関する取組




(趣旨)

第15条 区は、ジェンダー平等に関して、この節に規定するもののほか、区の実情に応じた施策を講ずることにより、人権を尊重し差別をなくす社会の推進を図るものとする。




(ジェンダー平等の理念)

第16条 区は、次に掲げる事項が実現し、かつ、維持されるよう努めるものとする。

(1)性のありようによる差別的な取扱いが根絶され、何人も個人として平等に尊重されること。

(2)何人も、性のありようによる固定的な役割分担や差別意識にとらわれることなく、自己の意思と責任により多様な生き方を選択できること。

(3)何人も、性のありようにかかわらず、社会の対等な構成員として、社会のあらゆる分野における活動方針の立案及び決定に参画する機会が確保されること。

(4)学校教育、生涯学習その他の教育の場において、ジェンダー平等の意識の形成及び具体的な対応への取組が行われること。

(5)何人も、性のありようにかかわらず、家庭生活、職場及び地域における活動の調和のとれた生活を営むことができること。

(6)妊娠、出産等の事情に関して全ての人が理解を深め、尊重できること。

(7)国際社会及び国内におけるジェンダー平等に係る取組を積極的に理解し、推進すること。




(区が行うパートナーシップ証明)

第17条 区長は、前条に規定する理念に基づき、公序良俗に反しない限りにおいて、パートナーシップに関する証明(以下「パートナーシップ証明」という。)をすることができる。

2 区長は、前項のパートナーシップ証明を行う場合は、次の各号に掲げる事項を確認するものとする。ただし、区長が特に理由があると認めるときは、この限りでない。

(1)当事者双方が、相互に相手方当事者を任意後見契約に関する法律(平成11年法律第150号)第2条第3号に規定する任意後見受任者の1人とする任意後見契約に係る公正証書を作成し、かつ、登記を行っていること。

(2)共同生活を営むに当たり、当事者間において、区規則で定める事項についての合意契約が公正証書により交わされていること。

3 前項に定めるもののほか、パートナーシップ証明の申請手続その他必要な事項は、区規則で定める。




(パートナーシップ制度への事業者の配慮)

第18条 渋谷民及び事業者は、その社会活動の中で、区が行うパートナーシップ証明を最大限配慮しなければならない。

2 区内の公共的団体等の事業所及び事務所は、業務の遂行に当たっては、区が行うパートナーシップ証明を十分に尊重し、公平かつ適切な対応をしなければならない。




(ジェンダー平等に関する教育、啓発等の推進)

第19条 区は、ジェンダー平等の推進に関する調査研究、情報の収集及び提供を行い、ジェンダー平等に関する教育、啓発等を推進するものとする。




(ジェンダー平等に関する禁止事項)

第20条 区、渋谷民及び事業者は、性別による固定的な役割分担の意識を助長し、若しくはこれを是認させる行為又は性的少数者を差別する行為をしてはならない。

2 何人も、性のありようの表明に関して、正当な理由なく、強制し、禁止し、又は本人の意に反して、公表してはならない。




 第2節 子ども、高齢者、障害者及び本邦外出身者に関する取組




(趣旨)

第21条 区は、子ども、高齢者、障害者及び本邦外出身者の人権を尊重し差別をなくす社会の推進を図るものとする。




(子どもに関する取組)

第22条 区は、子どもの権利が保障され、安心して生きることのできるように、子どもの人権を尊重する教育、啓発等を推進するものとする。




(高齢者に関する取組)

第23条 区は、高齢者の意志が尊重され、安心して暮らすことができるように、高8 齢者の人権を尊重する教育、啓発等を推進するものとする。




(障害者に関する取組)

第24条 区は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)に基づく施策を講じ、障害者の人権を尊重する教育、啓発等を推進するものとする。




(本邦外出身者に関する取組)

第25条 区は、情報の多言語化によるコミュニケーション支援を行うとともに、異なる文化の理解を促進するための教育、啓発等を推進するものとする。




(不当な差別的言動の禁止)

第26条 何人も、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(平成28年法律第68号)第2条に規定する不当な差別的言動をしてはならない。




第4章 渋谷区人権を尊重し差別をなくす社会を推進する会議




(設置)

第27条 人権を尊重し差別をなくす社会の推進について調査し、又は審議するため、区長の附属機関として、渋谷区人権を尊重し差別をなくす社会を推進する会議(以下「推進会議」という。)を置く。

2 推進会議は、区長の諮問に応じ、次に掲げる事項について審議し、答申する。

(1)施策の計画及び実施に関する事項

(2)行動計画の策定及び評価に関する事項?人権を尊重し差別をなくす社会を支える意識の形成に関する事項

(3)人権の尊重及び暴力の根絶に関する事項

(4)前各号に掲げるもののほか、区長が必要と認める事項

3 推進会議は、前項に定めるもののほか、人権を尊重し差別をなくす社会の推進に関し、必要があると認めた事項について区長に意見を述べることができる。

4 前2項に定めるもののほか、推進会議の構成及び運営について必要な事項は、区規則で定める。




第5章 雑則




(他の区条例との関係)

第28条 渋谷区営住宅条例(平成9年渋谷区条例第40号)、渋谷区区民住宅条例 (平成8年渋谷区条例第27号)その他の区条例の規定の適用に当たっては、この条例の趣旨を尊重しなければならない。




(委任)

第29条 この条例の施行について必要な事項は、区規則で定める。