渋谷区議会議員の鈴木けんぽうです。
渋谷区の来年度予算編成方針が出たので、個人的な勉強を兼ねて資料として書き写しておきます。渋谷区議会の幹事長会にて報告されたものです。太字は私が書き足しています。




方針本文




令和6年度予算編成方針について(通達)




〇我が国の景気は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続くことが期待されているものの、世界的に金融引き締めが続く中、海外景気の下振れや金融資本市場の変動、物価上昇等、多くのリスクを抱えており、その動向に最大限の注視をしていかなければならない。

〇本区の最重要財源である特別区民税については、株価上昇の影響もあり堅調に推移しているものの、拡大の一途をたどるふるさと納税による税の流出や、度重なる株価や為替水準の乱高下の発生により、その先行きは不透明であり、今後の財政見込は予断を許さない状況にある。

〇こうした中、本区は、住民に最も身近な基礎自治体として、渋谷区基本構想に基づき、これまで同様、子育て・教育環境の整備や超高齢社会への対応、まちづくり、学校施設を始めとした公共施設等の長寿命化対策等に着実に取り組んでいくことが求められている。加えて、物価高騰やコロナ禍に顕在化した路上飲酒に起因する各種問題等、新たな課題に対してもスピード感を持って対応し、区民のウェルビーイングと来街者の満足度の更なる向上に取り組んでいかなければならない。

〇不透明な財政見通しの下、複雑多様化し続ける区政課題に対し持続的に取り組んでいくためには、全国自治体に先駆けて本格的に導入したフレックスタイム制や、最先端の水準にあるI CT環境等を最大限に生かし、業務効率化や職員の生産性の更なる向上を図り、引き続き経費の適正化を徹底することが不可欠である。

〇併せて、国・都の施策や補助金の利活用はもちろんのこと、各種事業の見直しや再構築を推進する中で、新たな財源の創出や民間活力の導入を推進する等、職員一人ひとりが常に自己変革を怠ることなく、全く新しい発想と行動で取り組み、全庁一丸となってこの難局を乗り越えることが重要である。

以上、十分認識の上、下記により令和6年度の予算編成に取り組むこと。




1 基本方針




令和6年度予算は、物価高騰や不透明な財政状況を想定して、経費全体の適正化に努め、行財政運営の持続可能性を確保しつつ、区民が安全・安心に、そして快適に暮らせるよう、デジタルガバメントの実現を推進していくとともに、本区の未来を見据え、「人づくり」と「まちづくり」に積極的に取り組み、シビックプライドの醸成にもつなげる予算とする。




2 重点項目




令和6年度予算について、政策分野別の重点・留意点は以下のとおりである。




(1)子育て・教育・生涯学習分野




ア 「未来の学校」プロジェクトでは、子ども一人ひとりの違いに寄り添い、世界一子どもたちの可能性を伸ばす新たな学び場の実現を目指すこと。また、学校を地域コミュニティの拠点として、今まで以上に地域に身近な開かれた施設とするとともに、将来の環境負荷や維持管理費の低減にも配慮し、整備を進めていくこと。
イ 教育ICTでは、児童生徒用ダッシュボードやアプリケーションを活用して児童・生徒が自らの取組や頑張りを可視化し、振り返りや認め合いを行い次の成長へと繋げていくとともに、令和7年度に予定している次期教育ICT基盤の導入に向けた検討を進めること。
ウ 多様なニーズを有する子育て世帯に向け、民間活力を更に活用するなど、新たな子育て支援サービスの在り方を検討し、子どもの健やかな成長に資する環境の整備に取り組むこと。




(2)福祉分野




ア 社会情勢や高齢者を取り巻く環境の変化を踏まえ、高齢者実態調査を含めた各種高齢者施策について、より効率的かつ効果的な実施方法の検討を行うこと。
イ 令和6年12月開設予定の神宮前三丁目障がい者施設については、本区の障がい者施設の核となるよう、指定管理事業者と連携し相談支援体制や医療的ケア対応の充実を図るなど、事業開始に向けた準備を着実に進めること。
ウ しぶやボランティアセンターについては、地域共生社会の実現に向け、人と人とが助け合い、行政、民間企業、NPO・団体等の地域福祉を支える担い手が、連携・協働するためのプラットフォームとなるよう、体制強化に努めること。




(3)健康・スポーツ分野




ア 区民が安心して健康的に過ごせるよう、新型コロナウイルスをはじめとした新たな感染症への対策については、常に国等の動向に注視し最新情報の収集に努めるとともに、これまでの感染症との闘いで得た経験を生かし、適時適切に各種対策を講じられるよう、可能な限り予算に反映すること。
イ パラスポーツについて、見る、体験する、支える、繋げる、育てる観点から様々な機会を創出し、障がい者理解の促進を図り、共生社会の実現を目指すこと。また、令和7年度のデフリンピック開催に向け、ボランティア講座等において国際手話によるコミュニケーションスキルの向上を図るなど、機運醸成に努めること。
ウ 学校部活動について、指導の外部化を推進するモデル校を拡大し、指導の質の向上と教職員の負担軽減を図るとともに、地域スポーツ団体等との連携を強化し、全ての区民が生涯を通じてスポーツに親しむことができる環境の整備を加速すること。




(4)防災・安全・環境・エネルギー分野




ア 安全確保のため設置している街頭防犯カメラ等について、経年劣化に伴う更新を行うにあたり、設置個所の整理や機器のネットワーク化を図るとともに、新たなカメラの利活用方法について多角的な視点から検討を行うこと。
イ 今年度で最終年度を迎える落書き対策プロジェクトについて、まちの美化維持を持続的なものとするため、落書き消去の主体を区から地域住民等へ移行できるよう検討すること。
ウ 渋谷区喫煙ルールの周知・徹底を目的に今年度から導入した喫煙ルール啓発員の導入効果を検証し、より実効性のある配置等を検討するとともに、民間の知見を活用し、喫煙所の整備加速を図ること。




(5)空間とコミュニティのデザイン分野




ア 公共施設等総合管理計画の基本的な考え方に基づき、区民ニーズや将来の人口動向といった社会情勢の変化を長期的に見据え、全庁を挙げ、組織横断的に今後の施設の在り方や公有財産の利活用方法を検討すること。
イ 渋谷区魅力ある公園整備計画の実現に向け、ロードマップを整理し、区内の公園を本区に関わるすべての人に愛され、区民自身が誇りに感じられる魅力的な場所としていくこと。また、その核となる玉川上水旧水路緑道の再整備に当たっては、「FARM」というコンセプトに沿った、コミュニティを育む場となるよう、仕組み作りを検討すること。
ウ 歩行者・自転車・自動車がより安全、安心、快適に通行できるよう、自転車ナビマーク・ナビラインの設置等、自転車通行環境の整備を加速化させるとともに、駐輪場活用促進等の放置自転車対策にも取り組むこと。




(6)文化・エンタテイメント分野




ア 本区にある150を超える文化・エンタテイメント施設を、文化的な資産と位置づけ、先端技術を取り入れた施策を展開し、その魅力を国内外へ発信し、文化・観光・産業の活性化を図ること。
イ 平成17年度の開館後、20年が経過する白根記念渋谷区郷土博物館・文学館について、更なる施設の魅力向上に向け、新たな展示の在り方について検討を行うこと。
ウ コロナ禍によって止まっていた国内外都市との交流について、再開していくとともに、成熟した国際都市を目指し、更なる交流促進に努めること。




(7)産業振興分野




ア 物価高騰が地域経済に与える影響を注視し、区民の生活を支える商店街や区内の中小企業への支援策を適時適切に講じ、地域経済の活性化を図ること。
イ デジタル地域通貨「ハチペイ」については、ユーザーの更なる利便性の向上のため加盟店の拡充を目指すとともに、区の様々な分野の施策と連携を図り、より区民生活に密着した地域通貨としていくこと。
ウ 昨年度設立したシブヤスタートアップス株式会社と連携し、国内外のスタートアップ企業の育成や、海外企業の誘致等を図り、その独創的なアイデアや技術を様々な社会課題の解決に生かしていくこと。




3 事務事業の見直しについて




(1)所管施策全般にわたり事業の事後検証を徹底し、最少の経費で最大の効果をあげるよう各所管において主体的に見直しを行うとともに、関係部局間の連携を強化し、類似事業の統合に努めること。また、長年実施している事業は、事業規模・内容が今なお適切であるか将来を見据え検証し、必要に応じ廃止を含めた見直しを行うこと。
(2)複雑・高度化する区政課題に迅速かつ的確に対応するため、官民の役割を踏まえながら、地域コミュニティ、NPO、大学、スタートアップ企業等の多様な主体との協働や、民間資金の活用を含めた民間活力の導入を積極的に進めること。指定管理を含め業務委託については、導入後の効率性・実効性を検証し、委託項目・仕様の見直し等により経費の適正化に努めること。
(3)渋谷サービス公社や社会福祉協議会、社会福祉事業団等と密接に連携するとともに、区の施策や団体を取り巻く環境の変化に応じた事業等の見直しを不断に行うこと。これら団体に対する財政支出については、補助及び委託の内容や方法等を改めて検証した上で、所要額を見積もること。




4 経費の見積りについて




(1)新規事業やレベルアップ事業については、成果目標と事業の見直し時期を明確に定めた上で、全体計画や将来展望を踏まえ、実施の適時性やイニシャル・ランニングコスト等を総合的に勘案した予算要求とすること。なお、これらの予算要求に当たっては、所要額の全部又は一部に充てる財源を、補助金の活用や所管既存事業の見直し等により、所管において確保することを基本とする。
(2)既存事業については、過去の決算等の分析・検証を行うとともに、標準見積様式を活用し単価・業務量を十分精査し、物価高騰の影響を踏まえ、経費の適正化を図ること。特に、多額の不用額が経常的に発生している事業の予算は、実績・実態に合うよう見積りの精度を高め、要求すること。
(3)施設の整備・改修等に当たっては、各種施設の長寿命化計画を基本に、財政負担の平準化の観点を踏まえ、実施時期を検討すること。計画の策定・設計段階においては、近傍の教育・生涯学習・区民・福祉施設との連携、複合化等、施策の在り方を含めた総合的な見地から検討を行うとともに、将来の維持管理費の縮減策も盛り込むこと。また、事業の特性に応じてPFI等の手法を積極的に導入し、業務プロセスの最適化や、工事から維持管理に至るトータルコストの縮減につなげること。




5 職員人件費について




(1)行政課題は複雑・高度化し、区の仕事が増加する一方で、本区はICT環境を整備し、業務効率化と職員の生産性向上を図ってきた。業務量増加への対応策を安易に増員に求めるのではなく、更なる事務事業のデジタル化による効率性の向上や生成AIを始めとした新技術の活用、各事業部門の人財配置の最適化により課題解決にあたること。また、会計年度任用職員については、勤務実態を詳細に把握するとともに、従事すべき業務の内容を精査・検討し、配置の最適化を図ること。
(2)業務委託の導入に当たっては、サービスの質・量の向上と職員配置の最適化の2つの視点からメリット・デメリットを見極めるとともに、導入前との比較による経費の優位性を考慮すること。




6 歳入の確保について




(1)特別区税については、国際情勢等による景気への影響を多角的な視点から検証し、精度の高い見積りとすること。また、負担の公平性の観点から、引き続き収納率の向上と滞納額の縮減を図ること。
(2)使用料・手数料等については、受益者の視点だけでなく、区民負担や他自治体の状況等、様々な角度から適正化を検討すること。
(3)国庫支出金・都支出金等については、国・都における改革や予算編成の動向を注視し、新たな財源を漏れなく活用するとともに、既存の区独自事業についても交付要件を満たす実施方法に変更するなど、様々な工夫により積極的に確保していくこと。
(4)財産収入については、未利用財産の活用等を積極的に進め、歳入の確保に努めること。
(5)その他、歳入全般について、収入未済や不納欠損の縮減に努めるとともに、新たな歳入確保策について、全所管が知恵を絞ること。