渋谷区議会議員の鈴木けんぽうです。
夏は議会的にはお休みの季節。なので、要望書という形で行政に提案するのが無所属である私のスタイルです。
今回は子宮頸がん予防ワクチン(以下HPVワクチン)の接種漏れ者に対する救済を渋谷区長・保健所長に要望してきました。
<記事サマリー>
- HPVワクチンは6年間も「積極的に進めない」という国の方針が続いている。そのあいだは情報提供が不十分で、知らずに無料接種期間を逃してしまった「接種漏れ者」が存在する。
- 接種漏れ者が自分の意志でHPVワクチンを接種しようと考えた場合、5万円程度の自己負担(定期接種期間なら無料)がかかり、また副反応があった場合の補償も定期接種期間とは大きな差がある。
- 接種漏れ者は国の方針で情報を知らされなかっただけなのに、この差は明らかに不当で大きすぎる。救済が必要
- そこで、接種漏れ者の救済を求める要望書を渋谷区長に提出
以下、本文です。
<勧奨差し控えと「接種漏れ者」>
HPVワクチンは子宮頸がんを予防するといわれているワクチンです。
子宮頸がんは性感染症で、年間3000人ほどの死者が出る重篤な病気です。死には至らなくても治療の際に出産できなくなったり、また感染しただけで精神的に追い詰められてしまったりする非常に恐ろしいものです。
HPVワクチンは子宮頸がんの原因となるといわれているウィルスを予防するワクチンです。平成25年に定期接種化され、ほとんどの自治体で無償接種として推奨されましたが、多くの重篤な有害事象(接種後に体調を崩すこと)がみられ、ワクチン由来かどうかを検証するためにその年に「積極的接種勧奨の差し控え(強くお勧めしない、ということ)」となりました。
それから6年がたち、今も再開(もしくは中止)のめどが立っていません。いい情報も悪い情報もひっくるめて、情報が定期接種の対象者にまったく伝えられない状態となっています。
定期接種として無料になる期間は小学校6年生~高校1年生です。差し控え当時の対象年齢の方は期間を過ぎてしまいました。当時小学校5年生だった世代は今高校2年生となり、知らないうちに無料接種期間が始まって、知らないうちに終わっています。
接種期間に接種しなかった方を接種漏れ者といいます。再開にしろ中止にしろ、結論が出ない限り、接種漏れ者は今後も増えることになります。

<接種漏れ者は非常に不利>
接種漏れ者は非常に不利です。仮に、いろいろな情報を吟味して自分で「接種しよう!」と決断したとしても、自己負担も大きく、また副反応被害があった場合の補償も少ないのです。
- 自己負担:定期接種期間は原則無償。接種漏れ者は全額自費(およそ4万5千円~5万円程度)
- 副反応時の補償:定期接種期間は予防接種法に基づく補償で比較的手厚い。接種漏れ者は一般的な医薬品の副反応補償制度に基づく補償で大きな差がある
同じ人でも時期を逃してしまうと圧倒的に不利になります。本人にミスがあるわけでもないのに、行政の方針により大きな不利益を被るのはあまりにもかわいそうです。この差は明らかに不当です。
充分豊かならまだいいのでしょうが、接種費用も被害時の補償も自費で対応できる方ばかりではありません。自分で「HPVワクチンを接種しよう!」と決断した方は救済する必要があると考えています。
そこで、長谷部渋谷区長・保健所長に対し「HPVワクチン定期接種 接種漏れ者への救済に関する要望書」を提出しました。以下全文を掲載していますのでご確認ください。
なお、これは全員強制接種を求めるものではありません。あくまで現行体制のなか、自分で接種を決断した接種漏れ者の不利益をできるだけ少なくしよう、ということです。
<要望書>
長谷部区長・保健所長あて
HPVワクチン定期接種 接種漏れ者への救済に関する要望書
HPVワクチンの定期接種にあたっては、平成25年に定期接種に組み込まれたものの直後に多数の有害事象が報告され、一時積極的勧奨が差し控えられました。以降極めて低い接種率にとどまっています。
積極的勧奨の差し控えが長期化する中、多くの接種漏れ者が存在しています。その中には、自らが情報収集し、リスクを承知で接種する方もいらっしゃいますが、任意接種となるため高額の自己負担と不十分な補償制度という二つの課題に直面しています。
接種漏れ者は自らに非がないにもかかわらず、時期を逃したために過大な負担を強いられております。接種漏れ者へのなんらかの支援・救済を検討していただくよう強く要望いたします。
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