渋谷区議会議員の鈴木けんぽうです。お越しくださいましてありがとうございます。




私はこどものころからゲーム・マンガに親しんできました。興味関心が増えましたし、人生が豊かになったと思っています。なので、コンテンツ文化を適切に成長させるために有志とともに「オタク議員集団」というものを作っています。




さて、香川県議会がネット・ゲームに関しての条例素案を出しました。ネット依存・ゲーム依存の対策をしていこうというものです。これについてはオタク議員集団の中で大きな議論となり、意見を集約して表明しようということになりました。




地方議会人なので、他の議会の自主性を侵すことのないよう配慮しつつ懸念を解消するために動く、ということでこのような形になりましたことをご理解ください。




以下、本文です。ご覧いただければ幸いです。なお、オタク議員集団の加入をご検討の地方議員の皆さん、おぎの大田区議にご連絡ください~




<参考:条例素案について>




子どものスマートフォンやゲーム機の使用は平日1日60分まで――。そんな制限内容などを盛り込んだ条例の素案を、香川県議会がまとめた。素案を修正して条例案をつくる。努力義務を課すが罰則はない。パブリックコメントを経て2月議会に提出、4月施行をめざす。県によると、制定されれば全国初の条例となる。

朝日新聞2020年1月10日




条例素案(主要部分) おぎの稔大田区議会議員サイト




<意見表明本文>




香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)の素案について意見表明




昨日、香川県議会において「第5回香川県議会ネット・ゲーム依存症対策に関する条例検討委員会」が開催され、そこで「香川県議会ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)の素案」が提出されました。




私たちは、香川県議会の皆様方が子どもたちの健全な発達を願い、「ネット・ゲーム依存症」に対して憂慮し条例を制定しようとする努力には心からの敬意を表します。議員提案条例をつくるのは多大な労力と真剣な議論、そして十分な合意形成が必要だからです。その真摯な努力を否定したり、条例制定権限に対し異を唱えたりするつもりは毛頭ありません。




とはいえ、ゲームを含む多様なコンテンツは貴重な日本の文化です。またスマホやゲーム機等によるインターネット利用はコミュニケーションをとったり楽しんだりするだけではなく、eラーニングや検索や電子図書などの学習端末として、スケジュール管理や映像記録などの記録ツールとして、購買や受験申し込みなどの生活ツールとして、私たちの生活になくてはならないものとなっています。

私たちはコンテンツ文化およびインターネット利用の健全な発展を願い、当該条例による規制が必要かつ最小限のものにとどまるよう求め、もって青少年の健全な成長とコンテンツ文化の適切な発展に資するよう願います。




よって、ここに意見を取りまとめ、公表いたします。




オタク議員集団




大田区議会議員 おぎの稔
渋谷区議会議員 鈴木けんぽう
世田谷区議会議員 薗部せいや
荒川区議会議員 夏目亜季
中野区議会議員 森たかゆき




<オタク議員集団の意見のとりまとめ>




(全体)
・ネット・ゲーム依存症についてはWHO等で議論が始まっているものの、まだ不明なことが多い。依存症を防ぐために必要かつ最低限度の規制を検討する材料はそろっているとはいいがたい。特に、親子の信頼関係や愛情、愛着が主要な原因と考えているように思われるが、これは非常に主観的な議論であり科学的根拠に欠けると思われる





(ゲーム依存)
・そもそもWHOも「研究によると、ゲーム障害はゲームをする人の中でごくわずかだ」としているにもかかわらず、一定年齢の子の保護者すべてに規制をかけることは過剰な規制といえるのではないか
・定義が漠然としすぎている。例えばゲーム障害(Gaming disorder)についてはWHOにより診断基準が示されており(ICD11)、限定すべきではないか
・オンラインゲームは射幸性が高いとの記述がある。射幸性について議論があるのは、ゲームの中でも「ガチャ」などの一部であり、オンラインゲームそのものを射幸性の高いものと捉えるのは実態に即しているとは言えない。丁寧な議論が必要ではないか
・ゲームを活用した教育や啓発、特産品や地理を覚えられる桃太郎電鉄のように、ゲームをきっかけに教科が好きになったり進路を決めたりする事例もあることに留意されたい




(ネット依存)
・国全体としてプログラミング教育や一人一台学習端末の方針を示し、常時接続された端末が学習に不可欠のツールとして認識されているのに、整合性が取れないのではないか
・スマートフォン等のデジタル機器によって学習するeラーニング、体調管理やスケジュール管理、写真や動画を活用した記録、電子図書の活用など、インターネットおよびデジタル機器はすでに生活の一部となっており、その重要性はこどもたちにとっても変わらない。デジタル機器やインターネットの利用制限は家庭のスタイル、学習のスタイルなど生活実態を勘案して個別に検討するものであり、県条例で一律に使用制限を課すべきではない。ネットでしか学べないプログラミング学習機会、ネットでしか受け付けない申し込みなども増加しており、根拠に乏しい規制は学習機会や受験機会・就労機会を失わせることにもつながりかねない
・時間と場所の制約なく学習や購買等を行えるのがインターネットの特性なので、規制は機会損失につながるのではないか




(保護者の責務)
・第6条において保護者の責務を定めているが、子どもと向き合う時間の多寡や愛着形成の不十分さがネット・ゲーム依存症につながると読める。しかし諸研究では因果関係が明らかにされていないのではないか。
・夫婦共働きやひとり親家庭等をはじめ、保護者は子育てや子どもとの関係について十分な時間を作れない場合もある。そのような保護者の悩みによりそう必要があるのではないか。




(18条関係)
・ルールは家庭で決めることであり、条例による規制になじまないのではないか。
・睡眠の確保や規則正しい生活習慣の確保のためであれば、使用時間の規制は目的外の規制であり、合理的ではないのではないか
・行政が一律に規制をかけようとするのは、親子間のコミュニケーション、考え、学ぶ力を損なうのではないか。規制がかえって親子間のトラブルを生み出す原因になる可能性もある
・インターネットはすでに生活の一部となっている観点から、根拠に乏しい時間規制は避けるべきである

(子どもの主体性)
・子どもの権利条約成立から30年。子どもの権利を制限しかねない条例であるのだから、子どもたちに対するパブリックコメントを積極的に行うべきである