渋谷区議会議員の鈴木けんぽうです。

平成15年4月に議員になってすでに13年が経ちました。その間、いろいろありましたが、一番印象的だったのが10年前にあったある事件です。

 

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高校生が渋谷区議会に「請願」を出した!

 

平成18年3月、生徒会活動を行っていた高校生たちが「渋谷は歩きたばこが多すぎて辛い! けむい!」と行動を開始。

高校生環境連盟という団体で、路上喫煙防止班が主体となって、渋谷区議会議員にヒアリングを行い、それをもとにこう移動を起こしました。。

 

当時は(今もですが)「きれいなまちしぶやをみんなで作る条例(通称・きれまち条例)」によりポイ捨てが禁止され、加えて「渋谷区分煙ルール」でマナー啓発をしていこうという体制になっていました。

平成14年に千代田区が「生活環境条例」で路上喫煙に罰則を設けたことをきっかけに、各地で罰則の是非について真剣に議論が行われました。その中で渋谷区は

  • オフィス街の千代田区と違い、渋谷は観光客や買い物客などの来街者が多く、定着させるのがむつかしいこと
  • ルールで縛るよりも、マナーとして啓発するほうがより望ましいこと

という理由から、おおむね議論としては「渋谷区分煙ルールを定着する報告で行こう」という方向で落ち着いていました。

 

そこに、高校生たちが「請願」を出してきたのです。ちょうど10年前の今日のこと。

 

(語句解説)請願

区民のみなさんが、区政に望むことを直接区議会に訴える制度。
憲法第16条により権利として認められており、ご意見やご要望を政治に反映させる役割を持つ。

渋谷区議会では、本会議で賛成・反対を採決することになっている。

 

 

渋谷区議会での審議について

 

提出された請願「渋谷区における歩行喫煙禁止条例の制定を求める請願」は、当時の高校生が自分の困りごとをそのままにせず、ポイ捨ての吸い殻数を数えるなど地道なデータを集め、409人の仲間とともに提出した議会への要求です。

これは、当時の渋谷区議会議員に衝撃をあたえました。高校生が真剣に、世の中を変えようと動いた…と。

委員会や各会派の会議で長時間の議論がなされました。内容の正統性はどうか。思いを実現するにはどうしたら最善なのか、と。結果は以下のようになりました。

 

<賛成>共産党、未来の渋谷(民主党と無所属議員の集まり)、無所属議員2名

(理由)来街者の多い渋谷は都内有数の繁華街を抱え、歩行喫煙禁止の姿勢を示すことには大きな意義がある、など

<反対>自民党、公明党、社会区民連、無所属2名

(理由)請願の思いは酌みたいが、まず現行の条例や分煙ルールを強化、拡充すべき
罰金を科すことに実効性の面から疑問がある、など

→賛成少数で否決(2008年3月31日)

 

私が所属していた会派「未来の渋谷」も、喫煙する議員・ルールよりマナーのほうが望ましいと考える議員が反対を、条例化が望ましいと考える議員が賛成をそれぞれ主張しまとまらず。その結果、会派でまとまった行動をとらず(「会派拘束をしない」といいます)、それぞれの議員が賛成反対を考えて主体的に採決に臨みました。

とても悩んで、神経使って、激論の末に決断したのをよく覚えています。

 

残念ながら高校生たちの思いは、否決という形で結論が付きました。

賛成も反対も真剣に考えて出した結論ですから、どちらが正しいということはありません。また、10年前の話ですから、あとから「こうするべきだった」などといってもしょうがない話です。

 

ただ、渋谷区議会ではこの請願をきっかけに路上喫煙・歩行喫煙に対する議論が進み、分煙ルールの強化や喫煙所の整備や公園の分煙などにつながったと言えます。

 

10年前の高校生の勇気ある行動は、

社会を変えるきっかけとなったのです。

 

18歳選挙権の導入が話題となっていますが、政治に参加できるのは選挙だけではありません。身近な問題の解決を求める制度が渋谷区議会にはあるのです。

必要がありましたら、ぜひおつかいください。

<参考:請願本文>

渋谷区における歩行喫煙禁止条例の制定を求める請願

紹介議員 東 敦子

請願代表者 高校生環境連盟路上喫煙防止班班長、青山学院高等部、代表者、大濱崎卓真さん

請願者410名

平成18年3月22日

 

【請願趣旨】

渋谷区分煙ルールでは重点地区において、歩行喫煙防止のために喫煙マナーの啓発活動やキャンペーン、清掃活動及び喫煙所の設置を行っています。しかしながら、例えば渋谷駅ハチ公前広場で路上に捨てられた吸い殻は分煙ルール重点地区の指定後、一時的に減少したものの、最近は指定以前とほぼ変わらぬ数まで戻っています。

そもそも歩行喫煙は、第一に「健康増進法」にもあるように、その副流煙が発がん性などを含む健康被害を及ぼすため、非喫煙者が健康被害を被る可能性があること、第二に、地方環境の整備という観点から街の美化が損なわれること、第三に、都市環境の整備という観点から街の美化が損なわれること、第四に、繁華街などでの路上喫煙が未成年者の喫煙を助長し、割れ窓理論的にそれが少年犯罪などに繋がっていくことが考えられること、といった非常に多くの問題点があります。

渋谷という町の特性を考慮し、また多くの地方自治体の施策を鑑みた上で、喫煙者と非喫煙者双方の理解が得られる条例の制定を望みます。路上喫煙という施策も、一部自治体ではすでに取り組まれています。しかし、双方の理解を得て標準化するまでの労力及び時間などを考慮し、まずは最低限のマナーとモラルだけで主張できる歩行喫煙禁止条例の制定を求めます。

 

【請願項目】

 

原稿の渋谷区分煙ルールを、「渋谷区歩行喫煙禁止条例」を制定することによって刷新し、渋谷区内の人通りの多い繁華街における歩行喫煙の禁止及びたばこの吸い殻のポイ捨て禁止を求めます。

条例がきちんと遵守され効果が出るよう、違反者に対して「過料」を課す罰則規定を条例に設け、行政による周知活動、取り締まりを原稿以上に積極的に行うよう求めます。

 

 

<参考:委員長報告(本会議)>

 

◆十九番(鈴木建邦) ただいま議題となりました渋谷区における歩行喫煙禁止条例の制定を求める請願につきまして、都市環境委員会の審査経過並びに結果を御報告いたします。
 本請願は、三鷹市、高校生環境連盟路上喫煙防止班班長、青山学院高等部、代表者、大濱崎卓真さんほか四百九人の方から提出されたものです。
 本請願の趣旨は、現行の分煙ルールを歩行喫煙禁止条例を制定することによって刷新し、渋谷区内の人通りの多い繁華街における歩行喫煙の禁止及びたばこの吸い殻のポイ捨て禁止、また違反者に対して過料を科す罰則規定を設け、行政による周知活動、取り締まりを現行以上に積極的に行うよう求めているものです。
 審査の中で、反対の立場から、請願の思いは酌みたいが、まず現行のきれいなまち渋谷をみんなでつくる条例や分煙ルールを強化、拡充すべきである。過料を科すことに実効性の面から疑問がある等の意見がありました。
 また、賛成の立場から、公共の施設内での全面禁煙や分煙は進んでいる。来街者の多い渋谷は都内有数の繁華街を抱え、歩行喫煙禁止の姿勢を示すことには大きな意義がある等の意見がありました。
 本請願については慎重審査の結果、不採択とすべきものと多数をもって決定いたしました。
 以上、都市環境委員会の報告といたします。

 

 

<参考:自民党前田和茂議員の反対討論(委員会)>

 

◆(前田副委員長) 請願受理番号第9号、渋谷区における歩行喫煙禁止条例の制定を求める請願に、不採択でお願いいたします。
 本請願は、高校生がまちの美化やたばこの危険性、さらには健康被害までも考え提出された請願でありまして、高校生が純粋に渋谷のまちを考えたということに思いを酌んであげたい部分もありますが、請願の趣旨である条例の制定となると、現在渋谷区で施行されているきれいなまち渋谷をみんなでつくる条例と渋谷区分煙ルールとの整合性からも反対をいたします。
 請願の趣旨にあります喫煙者と非喫煙者双方の理解を得るため、渋谷区では、渋谷、恵比寿、原宿、各駅周辺半径300メートルを重点地域と指定をし、喫煙場所の整備を行っておりますが、渋谷区全体を禁止区域にした場合の喫煙場所にかかる経費や、違反者に対して過料を科した場合の徴収コストを考えた上でも、今すぐにすべてを禁止するということは現実的ではなく、段階を踏んで対応するべきと考えます。
 特に、罰金に関しましては、渋谷区分煙ルールを検討する際に、サラリーマンが多い千代田区と違い、繁華街へ来街者がいる渋谷区で罰金を徴収するのにかかるコストと、徴収拒否者が出た場合の不公平感を議論され、現状のルールにしたところでありました。
 しかし、請願趣旨にあるやけどや引火などの人的被害の可能性もありますので、制定されて3年がたつ渋谷区分煙ルールをさらに強化するために検討する必要があるとは考えます。
 今回は、条例の制定ということで、内容を熟読した上で検討し、反対をいたしますが、紹介議員の説明では、実際に条例を制定した場合、喫煙場所設置の必要性などの具体的な中身は考えていない、さらには請願項目の文章をきちんと読まれずに、内容を把握されていなかったことは、大変無責任であったと指摘をいたします。
 議員としての責務ということの発言がありましたが、議員としての責務というのであれば、現状の渋谷区で施行されているきれまち条例と分煙ルールをきちんと説明し、理解をしてもらい、高校生たちの純粋な思いを酌んであげ、生かせるような方法をサジェスチョンしてあげるべきであったと思います。
 例えば、条例制定ではなく、陳情などで歩行喫煙の危険性などを訴え、渋谷区分煙ルールの強化など提案されていたら、十分にその思いにこたえられたと思います。そのように考えてあげることが、紹介議員が言われていた議員の責務だと考えております。
 以上でございます。

 

あっさりまとめると、「賛成したかったけど、紹介議員がきちんとやり方を教えなかったから反対」という感じかな

 

 

<参考:その当時出された代表的な請願>

 

渋谷区内の教育施設等に日影を落とす中高層建築物の制限に関する請願(平成17年3月)

ある小学校のとなりに高層マンションがたつことをきっかけに、PTAが主体となって

「保育園、幼稚園、小学校、中学校に日影を落とす中高層建築物を制限する条例を制定して教育環境を守れ!」という趣旨で提出した請願

 

→ 賛成多数で可決。絶対高さ制限制度につながる。