渋谷区議会議員の鈴木けんぽうです。

 

ヘイトスピーチを行うと目される団体が渋谷区内の区民会館を利用するという情報が区民の方からもたらされました。

要望として「使用不許可にしてほしい」とのことでしたが、事前に不許可にすることは憲法に規定された「表現の自由」「集会の自由」を事前に制限することになり、憲法を守る義務のある渋谷区ではできないと判断しました。

 

そこで、少なくとも今後は区民会館等の施設をヘイトスピーチ等の人権侵害につながる行為では利用できなくするため、以下の要望を区長・所管部長に提出いたしました。

回りくどいやり方ですが、実質的に利用制限がかかると思っています。

 

ご確認ください。

 

ただし、公園・道路の利用制限(デモ等の禁止)については現段階では難しいと考えています。ヘイトスピーチ規制法や刑法(名誉棄損罪・侮辱罪など)の強化によるのが妥当ではないかと。いずれにしても区では実効性のある手段は少なく、国でさらに検討してもらう必要があるでしょう。

 



 

平成30年3月2日


渋谷区長 長谷部 健 殿

区民部長 菅原 幸信 殿

渋谷区議会議員 鈴木 建邦

 

区民会館等の管理についての要望

 

 区政進展に向けた努力に心より敬意を表します。

 さて、区民会館において、いわゆるヘイトスピーチを行っていると目されている団体が渋谷区の施設にて集会を行う予定であるが中止すべきとの指摘が区民から上がっています。

 区民会館において、思想表現を理由とする使用取り消しは憲法に規定される「表現の自由」「集会の自由」の観点から慎重に行わねばならず、泉佐野市や上尾市における判例(注)を参考に適切な判断が求められます。

 他方、渋谷区は平成25年3月に議会において「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」を議決しております。その前文では日本国憲法に定める個人の尊重及び法の下の平等の理念に基づき、性別、人種、年齢や障害の有無などにより差別されることなく、人が人として尊重され、誰もが自分の能力を活かしていきいきと生きることができる差別のない社会」を実現することを誓っています。

 この観点から、区民会館等の管理においては下記のような対策を行い、今後区民会館を活用する団体等によって不当な人権侵害が起きないよう努めることを要望いたします。


  1. 区民会館等の施設については設置目的を地域住民の交流等を主体とするものに順次改めていくこと。
  2. 区民会館等の施設の利用にあたっては人権侵害につながる行為について禁止すること。
  3. 区民会館等の敷地内での広告物等(集会タイトル等を含む)の掲示にあたっては事前協議制とし、許可を受けたうえで掲示する手続きを定めること。
  4. 区民会館等の団体登録においては、上記を含む禁止行為を行わない旨の誓約を求め、禁止行為を行った場合には団体登録を取り消す手続きを定めること。

 

以上

 

注)

泉佐野市民会館事件:「単に危険が予想されるだけではなく、明らかに差し迫った危険が具体的に予見される」場合は使用不許可でも合憲とした判例。平たく言うと、死亡者や重傷者、施設の破壊などがほぼ確実に起こる場合のみ不許可が認められるということ(判例百選88番)

上尾市福祉会館事件;不許可にできるのは「許可権者の主観ではなく客観的に紛争が予想され」「(主催者が平穏に行おうとしているのに)警察の警備があっても混乱を避けることができないなどの特殊な場合に限られる」とした判例