渋谷区議会議員の鈴木けんぽうです。
舛添都知事の辞任が決まりましたね。
「成果と関係ないところでこんな叩かれてやりすぎだ…」的なコメントがちらほら見えるのだけど、具体的に舛添都政の成果というのはあまりみないので、フェイスブックに中立的な立場から簡単にまとめてみたらなかなか好評でした。
「こういう情報を知りたかった!」という声が多かったんですね。
ただ、私の見方は地方議員のものであって、都政を網羅したものではありません。
なので、よくまとめられた都政専門誌の記事を要約して紹介します。
もともとは発表されたときにブログに資料として載せようと思って準備していたのですが、豪華視察が批判され始めたのでお蔵入りになっていたのでした。
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目次
<一応、私の考え>
私の考え方としては、資質の面の問題なので、最終的には成果は関係ないと思います。
ルールと秩序を作る人が、これらを尊重し守る意識が無いのは深刻ですから…
そもそも資質って政治家にはとても大事で、「応援したくなるほどの魅力」や少なくとも「悪意を持たれにくいだけの誠実さ」は目指すべきだと思うので、舛添さんの弁護をする気はさらさらないです。
特に、お金のはなしは本当に危ない。今出ているのは氷山の一角という説もあるしね…
以上、一応私の立場を述べておきました。
それでは、ご覧ください。
「安定軌道」に乗り始めた舛添都政
日本経済新聞社編集委員兼論説委員 谷隆徳
(「都政研究」誌2016年3月号)
以下要約です。
○知事の視線は「二年先」(次の選挙、という意味)
- 施策や予算説明などで舛添都知事は「二年後の成果はどうか」としばしば問いただした
- この二年間に打ち出した独自の取り組み(1)東京五輪に向けた取り組み(2)東京国際金融センター構想(3)非正規職員の正規化、障害者雇用の促進(4)介護保育人材の確保(5)水の都東京の再生(6)水素社会に向けた取り組み
- 五輪開催に向けた都市外交
- 築地市場への移転決断
- 「万機公論に決すべし」のスタイル。都政運営は極めて正攻法
- 猪瀬/石原知事の負の遺産解消(1)新銀行東京(2)都バス24時間化
○バランス路線は良好な都財政のたまもの
- 舛添都知事を支えているのはかってないほどに良好な都財政
- 都税が5年連続で増え、青島・石原時代(4兆円台前半)と比べて税収が一兆円近く多い(28年度予算5兆2千万)
- 投資的事業、特に単独事業は大幅に増えているが、都債発行額は大幅に減っている
- 1兆1千億円の基金
- 舛添知事はラッキー
○舛添カラーは「弱者への配慮」
- 東京都は「経済都市」と「生活都市」の両方の顔。美濃部都政は「生活都市」重視、鈴木都政は「経済都市」重視、青島都政は「生活都市」、石原・猪瀬都政は「経済都市」重視
- 舛添カラーは「貧困の連鎖を断ち切る、格差を是正するといったことに舛添カラーを出せたと思う」(H28年度予算発表時の記者質問に答えて)
- 五輪でもパラリンピック重視、障害者スポーツの振興など
- 障害者を正規社員として雇い入れる事業者を支援する制度などは石原・猪瀬都政では考えられない
- 舛添都政は「生活都市」重視といえる
○国との協調
- 石原都政は国の無為無策を批判して原動力
- 舛添都政は国との協調路線
- 都の新年度予算を官房長官に説明した資料も「国と連携し日本全体の成長を支える首都東京の取り組み」というタイトルだった
- 都市外交の補佐役に外務省キャリア官僚起用、危機管理のために防衛相OB起用なども良好な関係の現れ
○長期ビジョン(猪瀬)からグランドデザインへ
- 2014年12月「世界一の都市・東京」を目指した長期ビジョン(猪瀬時代の置き土産・無難で総花的・オリンピック前後までとそれ以降に分けて目標をまとめる)
- 2015年6月に「東京のグランドデザイン検討委員会」を立ち上げ。2040年を念頭に、超長期の東京の姿を描こうとする
- 石原知事(計画嫌い)、猪瀬知事(目の前の話題性のある問題にのめりこむ)に比べ、長期的な視点で政策形成に努める姿勢は評価できる
○新国立競技場をめぐってこじれが表面化
- 舛添知事と都議会自民党の関係は蜜月関係が続かなかった
- 海外視察への批判、受動喫煙を減らす条例検討に対しストップをかけるなど
- 亀裂がはっきりしたのは新国立競技場をめぐる問題
- 国の迷走に対し舛添知事は記者会見やツイッターなどで厳しく批判。これに対し、都議会自民党が「国と協力して取り組むべき話なのに、他人事のように批判するのはおかしい」とかみついた
- 当時の文部科学省は下村博文氏。元都議会議員で半ば身内。知事への反発が強まった。
- 都知事は情報を公開しながら物事を決める。都議会自民党の主力メンバーは水面下の根回しを進めたうえで物事を運ぶことを好む。行き違いは必ず生じる
- 「万機公論に決す」のだから、知事は議会からの批判も受け入れる覚悟はあるのだろう
- 議会軽視の姿勢だった猪瀬知事とは違い、桝添知事は議会に対してかなりの配慮をしている
○知事と議会は「国が支点のシーソー」
- 知事と都議会自民党の関係はシーソーのようなもので、その時々の政権の安定度が両者の力関係に大きく影響する
- 政権が安定していると都議会自民党は厳しく知事にあたる。政権が不安定になると知事の力が強まる
○見せ場を作れなかった「偏在是正問題」
- 地方法人課税の偏在是正問題は評価に迷う。
- 16年税制改正で消費税を10%に引き上げるのに合わせて(1)法人事業税の一部国税化を廃止し、元に戻す(2)法人住民税の一部国税化を拡充して地方交付税の原資にする、が決まった。東京都の財政への影響額は、現在よりも減収幅が1千億円増える(従来より5千1百億円程度)
- 多少巻き返して減収幅は少なくなった(およそ700億円程度)
- 外から見ると、政治的に注目されることもなく決着してしまった感はぬぐえない。舛添知事の見せ場もなかった。
○アピールは物足りない
- 舛添都政の課題をいくつか指摘したい。
- 幅広い分野で政策を進める舛添知事であるが、都民から見れば、この二年間の成果は何なのか全くわからないだろう。
- 石原都知事は二年間でディーゼル車への排ガス規制、大手金融機関への外形標準課税、都心部へのロードプライシング導入(実現せず)など話題になった
- 舛添都政は正攻法だけに話題性に欠ける
- 東京の存在感をPRする仕方もうまいとは言えない
○イニシアティブをどう握るか
- 任期後半は五輪への対応が強まることとなる
- 舛添知事の言動を見ていると、五輪運営に関する主導権をもっと握りたい等意欲が感じられる
- 確かに、開催都市のトップだし、都市外交を得意分野とするからなおさらか
- 主導権にあまりこだわると、国と軋轢を生みかねない
- 五輪大会の成功を第一に、独自性をどこまで発揮できるのか。真価はこれから問われる