渋谷区議会議員の鈴木けんぽうです。
渋谷区が進めている「未来の学校」が、どうも教育に身近でない方にとっては「こんなの教育じゃない」と思われる可能性がありそうなので、私なりに解説しようと思い立ちました。
今回はラーニングコモンズです。馴染みない言葉ですね。





ラーニングコモンズのところから再生されます




ラーニングコモンズとは




もともとは図書館の「静かに読むだけでなく議論やグループ学習できる」開放的な空間。スタッフがいて知的好奇心を拡張する手助けをする場合も。

PVでは広いラウンジに自由な学びのエリアが点在した空間としています。
わかりやすく言うと「新時代の学校図書館」です。

なお、コモンズとは「入会地」のことで、だれでも立ち入ることのできる空間を指しています。




「新しい学校づくり」整備方針より




そもそも我々の時代と学びや学校図書室に対する考え方がずいぶん違います。




【学習】昔:知識や技能、つまり教科書やテストに出そうなことを知ること → 今:それに加えて知らないこと・調べたいことを探究したり議論したりして、生きる力(学習指導要領より)を育てること

【学習の仕方】昔:学習はひとりでするもの → 今:仕事と同じで協働するもの(学習指導要領「主体的、対話的で深い学び」)

【図書室】昔:本は読むもの。図書室は本を読むところ → 今:本もネットも全部が情報。情報は調べるもの。図書スペースは情報を調べるところ。授業でも使う。もちろん本も読むし、本を通じた交流(先生も含む)もする




こういう時代背景にあった図書室が、ラーニングコモンズとなります。




文部科学省「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方」最終報告より




静かな場所も確保




ラーニングコモンズは交流を前提にしたオープンスペースですが、これだと「集中できなそう」と感じる方もいると思います。

渋谷の学校の考え方は多様性重視なので、できるだけいろいろな個性や状況に対応できるようにしています。ですから、集中したい時、にぎやかな状況があまり得意ではない子に合わせた環境も当然用意されています。




「新しい学校づくり」整備方針より




私立の学校のラーニングコモンズなどを見に行っても、周辺部には落ち着いて本を読んだり勉強したりする空間を確保しています。




神南小学校での検討




神南小学校建て替えに関する基本計画書より




先日公表されました神南小学校建て替えに関する基本計画書でも図書室はオープンスペース化して中央に配置されています。常に図書スペースがそばにあることで「読もうかな」「見てみようかな」ということも期待できますし、また複数のこどもが集まって本を楽しむなども可能です。

また、〇〇コモンズを階段と組み合わせることで、開放感のある場所にしようという意図が見えますね。




成長段階に合わせた配置




ただ、小学校ということで大きなオープンスペースにはしないで、成長段階に合わせた小さいオープンスペースを配置しエリアごとに性格づけしていくというやり方になっています。
そのうえで、教室とこれらのオープンスペースを弾力的に学習スペースとして活用することが想定されています。





神南小学校建て替えに関する基本計画書より




小1などは教室の床に寝そべって書いたりすることもあるので小上がりのあるリビングのようなオープンスペースは確かに合うでしょうね。

対して高学年などはタブレット端末で作成した文書を大画面に投影してのプレゼン発表等も多くなるので、機能性を重視する方針となっています。

さらに、中学生になるとPVのような大きな開放感のあるラーニングコモンズがそぐわしいでしょう。学校の中心の居心地のいい、家庭でいうとリビングのような空間として、こどもたちの学びや交流の場になるはずです。




神南小学校建て替えに関する基本計画書より




まとめ




いま、学習指導要領上は「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」が中心思想となっています。また、探究、表現、学びに向かう力、など従来とは一線を画した教育となっています。

これを学校施設として強力に後押ししていく仕組みの一つがラーニングコモンズです。図書館機能をオープンスペース化し、現代の学びに合う形にするものです。

居場所として、学びの場として、交流の場として、探究の場として、授業の場として、制作の場として、教室の拡張エリアとして…さまざまな活用ができるラーニングコモンズには大きな可能性があると思っています。