渋谷区議会議員の鈴木けんぽうです。

昨日、ツイッターで現職都議会議員の「実績」をきっちり確認する方法を投稿したらけっこう拡散されました。

きっとみなさん、こういうノウハウを知りたいんだろうなぁ…と感じたので、ひととおりまとめておきます。

 

 

1)現職都議会議員が掲げている「実績」を確認する

 

私は渋谷区議なので、渋谷区議の現職、大津ひろ子都議からピックアップしてみます。前田都議は補欠選挙組で就任1年なのでちょっとデータが足りません。

まず、ウェブサイトなどで実績を確認してみましょう。

 

 

 

おお、「都から国を動かし、日本初の使い捨てライター安全基準義務付けを実現」ですと!

素晴らしいですね! 実力ありそうです。

これについて検証してみましょう。

 

2)東京都議会の会議録で発言を確認する

 

基本的には、議員は議会での発言をもって行政を動かします。もちろん各種の申し入れや非公式の協議もありますが、「わたしがやりました!」は通常は議会で発言して議事録に残しておくものです。

ということで、東京都議会の議事録を検索してみましょう。

 

東京都議会 会議録の検索と閲覧

 

 

 

細かく検索することも可能ですが、とりあえず調べるだけなら赤丸の部分だけで十分です。

検索語に「ライター」、年の指定は「2010」を指定します。

検索ボタンを押してみると、以下のように一覧が出てきますね。

 

 

大津都議のサイトでは「6月議会」とありましたが、3月からすでに議会では議論されていますね。

まず、一番最初の3月15日の議事録をみてみましょう。

 

◯くまき委員 どうぞよろしくお願いいたします。

 次の質問に移ります。暮らしの安全という観点から、子どもの事故防止について伺います。

 厚生労働省の調査によれば、一歳から四歳までの子どもの死亡原因では、毎年、不慮の事故がトップに上がっています。重大事故の背景には、大事に至らないで済んだ同じような事故がたくさんあったと考えられます。こうした事故に関するデータを積極的に収集、分析していれば、大きな事故は防ぐことができるのではないでしょうか。

 (中略)

 そこで、子どもの事故防止対策に関する都のこれまでの取り組みを伺います。


◯秋山生活文化スポーツ局長 都は、子どもの事故防止を危害防止対策の最も重要な課題と位置づけ、ここ数年来、子どもの身近にある商品の安全性に関するテストを行いますとともに、小児科医などの専門家も加えました東京都商品等安全対策協議会におきまして、広く海外の事例を分析することも含め、子どもの事故防止に関する安全対策を検討してきたところでございます。

 具体的には、これまで問題視されることのなかった子ども用衣類のひもやファスナーなどによるけがや、ベビー用おやつによる窒息事故の防止対策、自転車用幼児ヘルメットの安全性などについて取り組み、今年度は、子どもに対するライターの安全対策を取りまとめたところでございます。

 これらの成果をもとに、国や事業者団体等へ提案、要望を行った結果、新たな安全規格が策定されるなど、商品の安全性向上や事故の未然防止につながってきております。

 (以下略)

 

 

あれ?

すでに東京都は年度内に安全対策を取りまとめて国や事業者団体に提案等をしたと言っていますね。年度ですから、4月~3月までの間にすでに東京都は動いているわけです。

 

ということで、2009年の議事録も検索してみましょう。すると10月29日の文教委員会で以下のようなやり取りがありました。

 

◯大津委員 そうした危険な情報をまとめて、そして、どう取り組んでいくかについてですが、例えば、家電製品を初め、暮らしの中で日常使っている商品には、使用方法によってはけがをしたり、健康への影響が懸念される商品があります。

 そこで、都がこれまで取り組んできたものの成果、そして、今年度取り組んでいるものの状況について、具体的にお伺いします。


◯清宮消費生活部長 東京都はこれまでも商品等に起因する危害、危険を防止するため、さまざまな商品テストや調査等を行ってきています。例えば、圧力式炊飯器につきましては、炊飯以外の調理方法によっては内容物が飛び散る再現テストを行ったほか、子ども用のトレーナーや帽子等に含まれるホルムアルデヒドについて調査をしました。

 これらの調査によって得られた結果については、それぞれ国や業界団体に情報提供を行うとともに、消費者へ注意喚起いたしました。

 また、ベビー用のおやつによる窒息事故防止のための安全対策につきましては、国や業界団体に提案、要望しましたところ、国は新たに母子健康手帳に注意喚起の記述などを追加し、業界団体は注意表示に関するガイドラインを制定したところです。今年度はライターの子どもに対する安全対策について検討を行っているところでございます。


◯大津委員 これからも引き続き、ぜひ行っていっていただきたいと思います。

 

ちなみにこれ以前に「ライター」について議事録には特に議論がありません。

つまり、議会で提案して使い捨てライターについて調査したというよりは、東京都が独自に商品等の調査を継続的に行っていて、平成21年度にライターについて提言を取りまとめた、ということが明らかになりました。

 

3)都議会でのやり取りを評価する

 

今回の調査では、以下のような時系列がわかりました。20分もかかりませんでした。

 

  1. 2009年)東京都が調査を始める
  2. 2009年10月)大津都議の質問に対し、「今年度はライターを調査している」という答弁がかえってくる
  3. 2009年度中)東京都が調査結果を取りまとめ、国や事業者等に提案を行った
  4. 2010年6月)大津都議がライターについて再度取り上げる(ちなみに、他議員も取り上げている)

 

いかがでしょう。行政が先行して動いていますね。確かに大津都議は議会で最初に使い捨てライターについて議論したとはいえそうですが、大津都議が主導して「都から国を動かし・・・実現」とまでは言い過ぎなぁ、と感じます。

 

もちろん、国や東京都に別途申し入れなどを行っている可能性はありますが、どちらもそんなもので動くような生易しいものではないので、可能性としては薄いと思います。メインは議会発言です。

また、議員のグループ(会派といいます)で進めている可能性があります。なので、各議員の発言をひととおり確認することをお勧めします。

 

あとは、どのように評価するか。

「えー、東京都がやったことを自分の手柄にしてるだけじゃん!」と評価するか、「東京都が先行していても、その意義を認め、後押しをしたんだ!」と評価するかはあなた次第です。

 

 

しかし、恐ろしいですね…議会でどんなことを実現したのか、どういう行動をしたのか、調べようとすれば簡単に調べられてしまう。

ついつい話を膨らましてしまいがちの政治業界。「わたしがやりました!」はもはや禁句なのかもしれません。