
東京都が、令和9年度の国の施策及び予算に対する提案要求を公表しました。
来年度予算編成が8月ごろから本格化するので、その前に国に提案をする、というものです。都の提案要求は非常に幅広いものですが、渋谷区議の立場から見ると、強く支持したいものと、慎重に見なければならないものがあります。
目次
■ 支持したい3つの提案
1 ふるさと納税制度の廃止を含めた抜本的見直し

まず、最も強く支持したいのが、ふるさと納税制度の廃止を含めた抜本的な見直しです。
渋谷区にとって、ふるさと納税による税流出は極めて大きな課題です。ふるさと納税による影響が令和7年度に約58億円にも達し、区民税収入の約1割近くに達しています。
本区の財政状況は、特別区民税の増収が見込まれているものの、ふるさと納税による影響が令和7年度は約58億円に達するなど拡大し続けており…
令和8年度渋谷区当初予算案の概要
これは、区民サービスや学校施設の更新、道路・公園などのインフラ整備に使えるはずの財源が区外に流出しているということです。本来、区民が納めた税金は、区民の生活を支えるために使われるべきです。都が「廃止を含めた抜本的見直し」を明確に求めたことは私も強く支持します。
2 初等・中等教育の充実とアントレプレナーシップ教育

次に注目したいのが、初等・中等教育です。給食費無償化などの負担軽減がかなり強く要求されています。
そしてもう一つ、渋谷区議として注目すべだなと思ったのはアントレプレナーシップ教育です。
渋谷は、スタートアップやクリエイティブ産業が集積する街です。子どもたちが早い段階から、課題を見つけ、仲間と考え、社会に働きかける力を育むことは、渋谷らしい教育の方向性とも重なります。
渋谷区でも、区立中学校の特色づくりプロジェクトが進められています。令和9年度4月からの本格実施に向けて、広尾中学校と原宿外苑中学校は、アントレプレナーシップを特色として掲げています。
これは単に「起業家を育てる」という狭い話ではありません。自分で問いを立て、社会の課題を見つけ、仲間と協働し、実際に行動する力を育てる教育です。国の予算や制度でこうした教育が後押しされれば、渋谷区の特色ある学校づくりにも大きな追い風になりますね。
3 多文化共生における国の責任と財源の明確化

外国人住民や外国につながる子どもが多い渋谷区では、日本語支援、生活ルールの周知、相談体制の整備は欠かせません。
都の提案要求では、外国人との秩序ある共生社会の推進について、在住外国人の生活実態の把握、税制・社会保障制度や生活習慣の周知、そして必要な経費を国の責任と財源で措置することを求めています。
実際、東京都教育委員会の令和6年度資料では、渋谷区内で日本語指導が必要な外国籍の児童生徒は88人、小学校56人、中学校32人とされています。これは単なる個人に対する語学支援の問題ではなく、学校生活、保護者対応、地域との関係づくりにまたがる社会全体の課題です。
また、国民健康保険については、いくつかの自治体で外国籍の方の未納率が非常に高いことがニュースとなりました。渋谷区では幸いそこまで酷くありませんが、実態調査は必要です。
国がこの分野に責任と財源を持って支えることによって、真の共生社会をつくるための基盤とすべきです。
■ 慎重に見たい2つの論点
4 行政システム標準化は、独自サービスの余地を残すべき

自治体システムの標準化や共同利用には、コスト削減や事務負担軽減という意味があり、やむを得ないかなとも思います。
ただし、全国一律の仕組みが強くなりすぎると、渋谷区が進めてきたスピード感あるDXや、区民に近い独自サービスの改善余地が狭まる懸念もあります。標準化は、自治体を平均化するためではなく、基礎的な事務を効率化し、その上で各自治体が地域に合ったサービスを展開しやすくするためのものであるべきです。
5 羽田空港の機能強化は、新ルート固定化につながらないように

国際競争力の強化や空港機能の充実は重要です。羽田空港の利便性は、東京全体の経済や観光にも大きく関わります。
しかし、渋谷区民にとって羽田新ルートは、長期化しつつある現実の生活環境の問題です。渋谷区の説明では、南風運用時の15時から19時までの実質3時間程度、A滑走路に到着する便が1時間当たり14便程度、C滑走路に到着する便が1時間当たり30便程度、渋谷区上空を飛行しています。もちろんその日の天候によりますが…
都の提案要求では、羽田空港の更なる機能強化や空港容量拡大に向けた方策の検討が掲げられています。ここで最も懸念するのは、容量拡大の議論が、結果として羽田新ルートの固定化や、さらなる活用につながってしまうことです。
国土交通省にも羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会があります。空港機能の強化を議論するのであれば、まず既存ルートの影響検証、騒音対策、安全対策、そして住民への丁寧な説明まで含めてほしいところです。
区民生活への影響を置き去りにして、なし崩し的に新ルートが固定化されることには、強い警戒感を持っています
■ 結び
都の提案要求には、渋谷区にとって歓迎すべき内容が多く含まれています。特に、ふるさと納税制度の見直し、アントレプレナーシップ教育、多文化共生への国の責任明確化は、渋谷区の課題や可能性と直結しています。
一方で、区民の静かな住環境や渋谷区らしい行政サービスを損なうことがあってはなりません。
渋谷区議として、歓迎すべき点は歓迎し、慎重に見るべき点はしっかり指摘していきます!
ちなみに、他にも目を引くところが山ほどあります。よかったら興味のあるところだけでも目を通してみてください。
- 高校大学無償化と大学の23区定員抑制撤廃
- 水素社会の推進
- 暑さに対応した勤務制度の創設や暑さ対策、大規模なゲリラ豪雨&洪水対策
- 重要な鉱物資源やデジタル技術の確保
- 国産AI開発とデータ利活用
- 不妊治療への公的支援
- 小笠原諸島への投資 などなど




