渋谷区議会議員の鈴木けんぽうです。




玉川上水路緑道について日本イコモス国内委員会から提言が出され、それに対して渋谷区の見解が示されています(リンクはPDF)。




読みにくいので、提言と見解を対応させて整理しました。詳しくはそれぞれの直リンクをご覧ください。




提言1:歴史・文化の尊重及び国指定「史跡」との関連を踏まえた保全・再生




イコモス提言




渋谷区における玉川上水の歴史・文化を踏まえた調査を行い、土木遺産、文化資産、既存樹林、樹木等の保全すべき対象を明確にすべきです。その上で、再生への目標と道筋を明らかにし、具体的なロードマップを作成することを提言します。
再整備の対象地には、開渠で残された素掘りの玉川上水が、国指定「史跡」として残さ れています。市街地における貴重な土木遺産ですが、現状は、高い柵に囲まれ、インフォ メーションも十分ではなく、街とのつながりは稀薄です。所管されている東京都水道局や 隣接する世田谷区等と協議を行い、「史跡を活かしたまちづくり」を行うことを提言いたします。また、将来的には、文化財保存活用地域計画(文化財保護法)や歴史的風致維持向上計画(歴史まちづくり法)等の策定により、文化的資産の維持・継承に向けた確たる基盤の形成が重要です。




渋谷区見解




本区は、玉川上水が江戸からの歴史を有する地域の貴重な土木遺構・文化遺産であることを深く認識しており、これまでも、書籍の発行や案内看板の現地設置、区内の小学校で玉川上水の歴史を学ぶ機会を取り入れるなど、歴史や文化の継承に取り組んでまいりました。 本事業においても、橋の親柱や京王線の柵は現地に残し、植栽においては郷土の固有種を新植するなど、その歴史を尊重しています。 また、区内にある玉川上水の開渠については、国の史跡に指定されており、東京都水道局の管理となっておりますが、これまで以上に「史跡」を活かしたまちづくりとなるよう、引き続き、国や東京都、近隣の自治体などの関係機関と連携してまいります。




提言2:生物多様性と武蔵野の杜




イコモス提言




生物多様性国家戦略に基づき、武蔵野台地の生態系を踏まえ、郷土の固有種の群落構成に準拠した、「武蔵野の杜再生プログラム」をつくりだすことを提言いたします。渋谷区には、17 世紀初頭に整備された「井伊家・林泉」に由来する雑木林が、明治神宮内苑の「御苑」において、手厚く保護・継承されています。その結果、ここには涸れることのない清正井が維持されており、生物多様性と環境の持続的維持の国際的モデルとなっています。人と共に 400 年の歳月を歩んできた自然環境の再生を目標とし、渋谷区が「生物多様性国家戦略」をリードしていく役割を担われることを期待いたします。




渋谷区見解




現在の緑道は、サクラなどが大きく育っている一方で、トウネズミモチなどの対策が必要な樹木も存在しています。 本事業においては、既存樹木や日照条件などの現況の周辺環境に応じて、郷土の固有種を含めた多彩で多様な植栽を行い、これまで以上に緑豊かな環境とする計画であり、明治神宮内苑の「御苑」に植えられているイヌシデやコナラといった樹種なども新植しておりますが、武蔵野台地の生態系や郷土固有種の保全を重視し、「生物多様性国家戦略」を踏まえた植栽計画を目指してまいります。




提言3:「清流復活」を見据えた柔軟な設計




イコモス提言




2030 年代半ばの「清流復活」を見据えて、安全で安心な暮らしを支え、生物多様性を育む水辺の導入が可能となるよう、変化に対して、柔軟に対応しうる設計内容に変更することを提言いたします。このためには、東京都、隣接する世田谷区、杉並区、新宿区等と協議の場を設けることを提言いたします。




渋谷区見解




今後は、東京都等の関係機関と連携し、緑道において、柔軟に対応できるように検討してまいります。




提言4:既存樹林の保全と回復




早急に取り組まなければならないことが、この間の樹林への過度の利用、生態系の変化等により影響を受けている樹林の保全と回復です。持続可能な健全な森を、今後 100 年以上にわたり継承していくためには、病虫害に侵された樹木や外来種の除去、間伐、土壌の改良等を行っていかなければなりません。工事に伴う樹木への影響については、きめ細かなモニタリングを行い、健全な森の形成を行っていく必要があります。ちなみに、日本を代表する伊勢神宮の杜では、千年の計画にもとづき、適宜、間伐を実施し、健全な林分の形成を行っておられます。
森は、雨水を吸収し、気温を逓減させ、しかも多くの人々に安らぎと憩いの場を提供するかけがえのない社会の財産です。渋谷区におかれましては、隣接する代々木公園や明治神宮内苑とのネットワークを重視され、玉川上水の歴史的・文化的価値を損なわないよう、既存樹木の保全と回復を緻密に行っていかれますことを提言いたします。




渋谷区見解




緑道の既存高木については、これまでに地域の方々から、可能な限り残してほしいといった強い要望があったことから、街路樹診断等マニュアル(東京都)に基づく樹木診断を実施したのち、専門家から助言を得て、丁寧に対応して最大限残してきたところです。 今後も、地域のみどりのネットワークや歴史・文化などを重視するとともに、専門家から助言を得ながら、必要に応じて根系調査をするなど、健全な樹林の保全と回復を見据えた再整備後の樹木の状況について、丁寧な検証を行ってまいります。




提言 5:桜の回廊の尊重




玉川上水の中流域には、小金井桜と呼ばれる並木があり、大正 13 年(1924)に、「史跡名勝天然記念物保存法」により、名勝「小金井(サクラ)」に指定されています。小金井桜の起源は、元文 2 年(1737)頃であり、幕府は新田地域の活性化のため、武蔵野新田世話役の川崎平右衛門完孝に命じ、小金井橋を中心に、ヤマザクラを植えさせたと言われています。江戸期には、飛鳥山、御殿山と並び、花見の名所として活況を呈していました。
爾来、100 年を経過し、東京都水道局、小金井市、市民により保全・再生活動が行われています。
渋谷区の玉川上水緑道にも、数多くの桜が植えられていますが、いずれもソメイヨシノであり、老木となり、どのように更新していくかが大きな課題となっています。
現在の再整備計画には、この視点が欠落しており、同じ玉川上水の小金井桜の調査をふまえて、保全と更新、そしてソメイヨシノにかわる樹種の検討を行うことを提言いたします。玉川上水の下流には新宿御苑があり、日本の桜の様々な品種が集められています。当該地域の見直しを行うことにより、小金井~渋谷区玉川上水~新宿御苑~外濠~皇居に連なる「櫻の回廊」を、次世代に手渡していくことができます。




渋谷区見解




現在の緑道には、数多くのサクラが植えてあり、地域の皆様に大変親しまれております。一方、多くのサクラは老木となり、健全性が低下しているものもあります。 これまでも、地域の方々から既存のサクラを残してほしいとの意見があり、本区としても可能な限り残しているところですが、老木となったサクラの適切な更新は、重要な課題であると認識しています。 本事業においては、十月桜や神代曙などの多様なサクラを新植することを計画しておりますが、引き続き、玉川上水の歴史を踏まえた「桜の回廊」の実現に向けて検討してまいります。




提言6:近代を代表する産業遺産、文化資産との連携




イコモス提言




玉川上水緑道の初台、代々木地区は京王電鉄発祥の地であり、京王線が地下をはしっており、近代鉄道の遺構も残っています。現在の代々木公園は、明治 42 年(1909)に代々木練兵場が設置された地であり、これにあわせて、13 間道路(幅員約 23.6m)が整備されました。明治神宮の造営に伴い、この道路は「西参道」となり、今日にいたります。ここには、大正 10 年(1921)に設立された東京乗馬倶楽部があり、隣接地は渋谷区立ポニー公園として、多くの子どもたちの体験の場となっています。
しかしながら、西参道と玉川上水の交わる重要な地区は、都市計画公園として決定されていますが、現在、東京都水道局等が所管する駐車場となっており、玉川上水緑道は、ここで、分断されています。東京のかけがえのない文化遺産を、今後のまちづくりに活かしていくために、将来的には文化財保存活用地域計画(文化財保護法)や歴史的風致維持向上計画(歴史まちづくり法)等の策定も見据え、東京都、渋谷区等が連携して、取り組まれることを提言いたします。




渋谷区見解




玉川上水旧水路緑道は、周辺の西参道や明治神宮などを含め、歴史を感じることができる区内の貴重な財産だと認識しており、これまで以上にこれらの資源を活用し、地域の歴史や文化を育むまちづくりを進めていきます。 また、幡ヶ谷緑道と代々木緑道に接する駐車場については、本区としても緑道としての再整備を目指しており、この駐車場を含めた幡ヶ谷緑道から代々木緑道にかけての一帯を、令和6年3月に都市計画公園として都市計画決定し、現在も土地所有者と継続的に協議を行っています。今後も、実現に向けて積極的に取り組んでまいります。 加えて、文化的資産の維持・継承に向けた基盤の形成についても、今後、関係機関と連携しながら、検討していきます。