
SIW(ソーシャルイノベーションウィーク)の一つ「探究学習の可能性」について、概要をまとめました。
目次
感想
先に感想を書いておきます。
非常に良好に探究学習が進んでいるのが確認できます。特に古巣の元PTA会長たちが作った「シブタン」の活動は頼もしい!
ぜひご覧ください。
ただ個人的にはマイ探究の紹介が少なかったのが残念です。私は探究学習の一番大きいポイントはマイ探究にあると思っています。こちらをメインに語って欲しかった。難しいのはわかりますけど…
探究フェスでも素晴らしかったので、ぜひこの取り組みを広く紹介したいですね。次年度に期待!
動画の内容
渋谷区の探究学習「シブヤ未来科」の概要
渋谷区では、従来の「総合的な学習の時間」を発展させた「シブヤ未来科」を全小中学校で展開しています。
異例の学習時間(155時間) [03:40〜]
文部科学省の特例制度を活用し、通常の年間約70時間を大幅に上回る【年間155時間(授業全体の約15%)】を充てています。午後の時間をまるごと探究に充てる学校も多く、質・量ともに圧倒的なリソースを割いています。
3つの柱 [04:10〜]
- 探究基礎: 各教科の学びを深めたり、思考ツール・電子ツールの使い方を学ぶ。
- テーマ探究: 学年ごとに「環境」「キャリア」などの共通テーマを設けて学ぶ。
- マイ探究(My探究): 子供一人ひとりが自分の興味・関心に基づいた個別の課題を追いかける。
一般社団法人「シブタン」:学校と社会の架け橋 [11:34〜]
「シブタン」は、学校・先生・教育委員会を外部から支えるため、渋谷区立小中学校のPTA会長経験者(13名)によって設立された組織です。
- 設立の背景: 新しい探究学習が始まる際、保護者側の不安を解消しつつ、渋谷の強み(企業やクリエイティブな人材)を教育に呼び込むために立ち上がりました。
- 役割(コーディネート): 先生が「こんなことをやりたい」と考えた際、多忙な先生に代わって外部企業や専門家をマッチングします。
- 先生のインスピレーション源: 単なる作業代行ではなく、外部の風を吹き込むことで、先生自身が「こんな授業もできるかも」とワクワクするきっかけを作っています。
動画内で紹介された具体的な探究事例
文字起こしで語られた具体的なプロジェクトは、子供たちが社会の「本物」に触れる貴重な機会となっています。
| 事例 | 内容と効果 |
| 神宮前小学校×レゴ | 「学校をワクワクする場所にする」をテーマに、6年生がレゴ®ブロックを活用して空間をデザイン。プロのアドバイスを受け、単なる工作で終わらない社会実装の視点を獲得。 |
| アーバンファーミング(都市農業) | キューピー社と連携。常盤松小・臨川小などで野菜を育て、最終的には世界の料理を作るレストランを企画。「自分で作ると嫌いな野菜も食べられる」という行動変容も。 |
| 環境配慮型ゴミ袋の販売 | 臨川小学校での事例。子供たちが発案し、商店街でゴミ袋を販売。「見向きもされない」という商売の厳しさを学び、PTAから資金を借りて返済する経済循環も体験。 |
| 探究フェス(発表会) | 代々木第二体育館で開催された大規模発表会。15社以上の企業・NPOがブースを出し、子供たちが大人に対して発表。「特別な場所」での体験が自信に。 |
| 広尾中学校マイプロジェクト発表会 | こどもたちが大人にたいしていっぱい発表したいと要望。多くの企業を巻き込んで開催。 |
現場のリアルな変化と今後の課題
先生の役割の変化 [08:11〜, 55:00〜]
「全員が同じゴール」を目指す一斉授業から、子供一人ひとりのゴールを支える「伴走者(コーチ)」へと役割がシフトしています。先生自身が「引き出し」を増やすことの重要性が語られました。
ただし先生方の負担が非常に大きいこと、異動された後の地域とのつながりに課題があることが示されました。
中学生への接続 [47:32〜]
小学校でのキラキラした学びを、受験や行事で忙しい中学校でどう継続させるかが課題としてしめされました。
現在、東京大学大学院生ら約250名のメンター [50:42〜]が「マイ探究」によりそう仕組みも始まっています。
「緩やかな相談」の必要性 [41:35〜]
かっちりしたプログラムを持ち込むのではなく、先生と外部の大人が「飲み会のような緩い場」でざっくばらんにアイデアを出し合える環境が、より面白い探究を生む鍵になると指摘されています。
結論:渋谷モデルが目指すもの [56:16〜]
このセッションの締めくくりとして、探究学習は単なる授業ではなく、「子供と街が学び合う新しい教育モデル」であることが強調されました。
PTA、企業、地域住民など、親ではない大人たちが多様に関わることで、学校が社会に対して開かれた場へと進化しています。
「子供たちが受動から能動へ、教師が教える側から共に作る側へ変わっていく。」(加藤校長 [54:59〜])



