渋谷区議会議員の鈴木けんぽうです。
「子どもの事故予防地方議員連盟・幼保対策室」の視察で、荒川区の事故予防・子育て支援施策について話を伺い、そのあと友の季ひまわり幼稚園にお邪魔してきました。
啓発で終わらせず具体的な仕組みに落とし込んでいる施策が多く、学びの多い視察でした。ご尽力いただいたみなさんに感謝。
目次
荒川区の施策(座学)
窓からの転落を防ぐ「補助錠」配布
窓やベランダからの転落事故を防ぐため、1歳6か月児健診等を受けた家庭に窓用補助錠(単価374円)と啓発リーフレットを配布する取り組みです。2025年2月にスタートし、1,440個を配布とのことでした。
面白いのは、リーフレット配布に加えて実際に一つ使ってもらうところです。使い方や効果を体験することで、必要に応じて家庭が追加購入し、他の危険箇所にも設置する行動につながるようです。
配布後の設置率等は調査できていないようですが、馴染みのないものですから使ってもらうのは大事ですね。

健診や訪問という既存の接点を活かす
妊娠期の講座から乳幼児健診まで、保護者と接する既存の機会を使って誤飲や転落の予防を繰り返し伝えているのも印象的でした。
健診会場には誤飲の危険がある物の大きさを確認できる器具を置くなど、実物で理解してもらう工夫がされています。節分では硬い豆による誤嚥を避けるため、区立施設では新聞紙で作った紙製のダミー豆を使用。
渋谷区は園によりますが小袋での実施が多いと思うので、ダミーは割り切った施策だなと感じます。
そのほかの施策
- 私立幼稚園バスの置き去り防止(予算370万円):義務化された園バスの設置促進。詳しくは後述
- 子育てに優しい施設ガイドライン(予算249万円):商店や医療機関にも共有し、街全体で子連れに優しい環境を広げる構想です。
- ケアリーバー(社会的養護出身者)の自立支援(予算612万円):退所時の支度金上限を20万円から30万円に引き上げ、保証料や資格取得費、運転免許取得費の補助も実施しています。
- ひとり親家庭の住み替え支援(予算305万円):引っ越し費用や礼金などに最大40万円を助成、多子世帯にはさらに5万円上乗せします。
- そのほか、小児インフルエンザワクチンの無償化(予算9,304万円)、猛暑時の室内遊び場拡充、遊び場情報を一元化したサイト「あらかわアソビクエスト」なども、住民が実際に使える形になっているのが印象的でした。

友の季ひまわり幼稚園へ
さて、ここからが今回のメインです。友の季ひまわり幼稚園は、区立保育園の跡地を活用し2017年4月に開園した私立幼稚園。園地1,079平方メートル、建物923平方メートルで、中央に円形の中庭があり、回廊状の園舎から各保育室につながる造りが印象的です。
バスの置き去り防止装置
視察のメインは、園バスに設置された置き去り防止装置の確認でした。
2021年度、2022年度に他自治体の送迎バスで園児が置き去りにされ熱中症で亡くなる事故が相次いだことを受け、2023年4月から安全装置の設置が義務化されました。荒川区では東京都の全額補助を活用し、私立幼稚園3園・計5台に370万1,000円を助成しています。
実際に見せてもらった装置は「降車時確認式」タイプで、エンジンを切ったあと、車内いちばん後ろにあるボタンを押さないとかなり大きな警報音が鳴る仕組みでした。
もっとも、装置があるから安心、というわけではなく、乗車人数と降車人数の照合、運転手と添乗職員による二重チェック、なども並行して安全面を担保する必要はあります。

アットホームな園舎、渋谷とはちょっと違う空気感
もう一つ印象に残ったのが、園舎全体のアットホームな雰囲気です。中庭には木を活かしたツリーハウスがあり、子どもが自然に触れながら自分で遊び方を工夫できる、なんとも魅力的な空間になっていました。回廊状に保育室が並ぶ造りも相まって、アットホームで親しみやすい印象を受けました。

それは町に対してのこの園のたたずまいでも感じます。正直なところ、渋谷区で施設を見て回っていると、防犯やプライバシーの観点でどうしても「外からの視線」「塀の高さ」「カメラの配置」といったことが真っ先に気になってしまいます。でも荒川区のこの園を歩いていると、そのあたりがどこかのんびりしているというか、「まあ、ここは大丈夫でしょう」という空気が漂っていて、良くも悪くも渋谷とは前提が違うんだなと感じました。

土地の余裕や周辺環境の違いもあるのだと思います。
シェード(日よけ)への補助は増額の余地あり
もう一点、園から要望として出ていたのが、園庭に設置する日よけシェードへの補助についてです。現状は50万円程度にとどまっており、これだと小規模なものしか設置できず、園庭を広く覆う設備の導入は難しいとのこと。
日よけの設置は渋谷でも課題になっています。近年の猛暑を考えると、安全を確保できる範囲で補助額や対象経費の見直しは必要ですね。

視察を終えて
今回改めて感じたのは、「啓発で終わらせない」ことの大切さです。窓用補助錠も、園バスの置き去り防止装置も、行動そのものを変える具体的な仕組みとして設計されています。
ケアリーバー支援や住み替え支援も同様に、「呼びかけ」ではなく住民が実際に使える制度として落とし込まれているところが非常に重要だと思います。
参考:東京都と渋谷区の施策
園バスの置き去り防止(東京都)
実施主体:東京都
窓の補助錠(渋谷区)
実施主体:渋谷区
補助錠などの防犯機器について、購入・設置費の2分の1、上限2万円を助成している。ただし、侵入盗対策を目的とする制度であり、荒川区のような乳幼児家庭への転落防止用補助錠の現物配布ではない。
ひとり親家庭の住まい支援
実施主体:渋谷区
家賃上昇分を月額上限1万円、礼金・仲介手数料等を助成している。 建物の取り壊しなどにより立ち退きを求められたひとり親世帯等と要件は厳しい。また、民間賃貸住宅への入居時には、保証会社の初回保証料を上限5万円まで助成している。



