要約

渋谷区長・教育長に対し、学校教育費の保護者負担軽減と、学校建て替えに伴う仮設校舎整備について要望しました。
給食費無償化に続き、学用品・教材費・校外学習費・制服等についても、義務教育無償化の理念をさらに進めることを要望しました。
また、仮設校舎は地域への負担を抑えつつ活用を進め、建て替えの遅れを防ぐため、さらなる確保と計画の堅実な遂行を要望しました。

 




令和8年6月29日・30日に、渋谷区長および渋谷区教育委員会教育長に対し、学校教育に関する2本の要望書を提出しました。




一つは、義務教育に係る学校教育費等の保護者負担軽減について。
もう一つは、学校建て替えに伴う仮設校舎の整備についてです。




どちらも共通しているのは、子どもたちの学びを諸事情(家庭の経済状況/施設整備の遅れ)によって左右させないという考え方です。




1. 学校教育費等の保護者負担をさらに軽くするために




渋谷区では、すでに区立小中学校の給食費無償化が実施されています。これは、義務教育無償化の理念を具体化する大きな前進だと考えています。




一方で、学校生活には給食費以外にもさまざまな費用がかかります。学用品、教材費、校外学習費、修学旅行費、制服・標準服、体育着などです。これらは一つひとつを見ると小さく見えるかもしれませんが、積み重なると子育て世帯にとって大きな負担になります。




近隣区でもこれらの助成に乗り出す自治体が増えてきました。




特に物価高騰が続く中では、こうした学校関係費が家計を圧迫し、教育機会の差につながる可能性があります。




そこで今回の要望では、区立小中学校において、学校教育に通常必要となる経費については、できる限り公費負担を進めるよう求めました。




予算要望などでは従来から求めているものですが、6月議会でも大きな論点になっていたため、改めて要望したものです。




「学校が指定としているもの」は公費で支えるべき




今回の要望で重視したのは、「学校が指定・実施しているものを、どこまで保護者負担にしてよいのか」という点です。




たとえば、学校指定の教材や校外学習、修学旅行、制服・標準服や体育着などは、実質的には学校教育の一部です。




そうであるならば、家庭の経済状況によって参加や経験に差が出ないようにする必要があります。




もちろん、すべてを一気に無償化するには財源の問題があります。だからこそ、まずは学校徴収金の実態を整理し、公費負担すべきもの、保護者負担として残すもの、任意性を明確にすべきものを分けていくことが重要です。




なお、宿泊行事については公費を投入して質の維持向上が図られましたが、これとは形は同じでも意義は違う方向の議論ともいえます。




就学援助制度も見直しが必要




学校教育費の公費負担を進めても、すべての負担がなくなるわけではありません。




通学費、医療費、通信費、家庭状況の急変、子どもの特性に応じた学びの環境など、個別事情に応じた支援は引き続き必要です。




そのため、比較的低所得世帯向けの就学援助制度についても、現在の役割を再整理し、物価高騰を踏まえて対象を広げることを求めました。




具体的には、認定基準を生活保護基準の1.5倍程度まで拡大することの検討を要望しています。




また、ギフテッド、不登校傾向、発達特性、専門的な教育環境の必要性などにより、区立小中学校ではなく私立学校等を選択する児童生徒についても、経済的理由で必要な学びが制限されないよう、支援対象の拡大を求めました。




「私立の子の給食費も無償化を」とのお声もあるようですが、優先順位としてはそれよりもこちらだなぁと考えています。




2. 学校建て替えと仮設校舎の課題




もう一つの要望は、学校建て替えに伴う仮設校舎の整備についてです。




渋谷区では、学校施設の老朽化に対応するため、学校建て替えが大きな課題となっています。




しかし、建築費の高騰や工期の長期化により、当初の計画通りに進めることが難しくなっています。学校建て替えロードマップも見直され、仮設校舎の確保や全体計画の長期化への対応が、より重要になっています。




学校施設の整備は、先送りすればするほど、老朽化への対応が難しくなります。だからこそ、無理な楽観に基づく計画ではなく、現実的で堅実な計画に見直しながら、着実に進める必要があります。




仮設校舎は「地域に負担をかける施設」だけで終わらせない




仮設校舎の整備では、近隣住民への影響が避けられません。




校庭や公園など、地域にとって大切な場所を使う場合もあります。だからこそ、仮設校舎を整備する場合には、学校教育への影響や児童生徒の安全を最優先にしつつ、学校で使わない時間帯の地域開放を最大限進めるべきだと考えています。




体育館、校庭、教室などを地域にも活用できるようにすれば、仮設校舎は単なる一時的な学校施設ではなく、地域にとっても意味のある施設になります。特に大山公園の仮設校舎整備については、公園との一体的な利用を前提に、地域住民の利便性が向上するよう配慮することを求めました。




仮設校舎のさらなる確保も必要




学校建て替え期間が長期化する中で、仮設校舎の数が足りなければ、建て替え全体がさらに遅れてしまいます。




その結果、老朽校舎を長く使い続けることになったり、他校の敷地内に仮設校舎を設けることで学校運営に負担が生じたりする可能性があります。




そこで、代々木公園などの大規模公有地の活用も含め、東京都との協議を粘り強く進めることを求めました。




仮設校舎を追加で確保できれば、建て替え時期の早期化、老朽校舎を仮設校舎として使う計画の解消、別の学校と同一敷地内に仮設校舎を建てる箇所の解消につなげることができます。




子どもの学びを止めないために




教育費の負担軽減と、学校建て替えに伴う仮設校舎の整備は、一見すると別々のテーマに見えます。




しかし、どちらも根本にあるのは、子どもの学びを安定して支えるということです。




家庭の経済状況によって学びの機会に差が出ないようにすること。
老朽化や工事の遅れによって学校環境が悪化しないようにすること。
そして、学校施設を整備する際には、地域への負担をできるだけ減らし、むしろ地域にとっても活用しやすいものにしていくこと。




教育は、子ども本人だけでなく、家庭、学校、地域全体に関わる政策です。




今後も、理想論だけでなく、財源や実現可能性も踏まえながら、子どもたちの学びを支える環境整備を求めていきます。









提出した要望書全文




義務教育に係る学校教育費等の保護者負担軽減に関する要望




令和8年6月30日
渋谷区長 長谷部 健 様
渋谷区教育委員会教育長 伊藤 林太郎 様
渋谷区議会議員 鈴木 建邦

義務教育に係る学校教育費等の保護者負担軽減に関する要望

区政進展に向けた努力に心より敬意を表します。

義務教育については、授業料や教科書の無償化にとどまらず、学校生活に通常必要となる経費についても、保護者負担を軽減していくことが重要です。

渋谷区においては、区立小中学校の給食費無償化が実施され、義務教育無償化の理念を具体化する取り組みが進められてきました。一方で、学用品、教材費、校外学習費、修学旅行費、制服・標準服、体育着等については、なお保護者負担が残されています。

物価高騰の中、これらの費用は子育て世帯にとり少なくない負担であり、教育機会の公平性という観点からさらなる対応が求められます。まずは渋谷区が学校設置者として責任を負う区立小中学校において学校教育費等の保護者負担軽減を一層進める必要があります。

また、学校教育費等の無償化を進めた場合であっても、通学費、医療費、通信費、家庭の急変、学びの特性に応じた就学環境の確保など、個別事情に応じた支援の必要性は残ります。特に、ギフテッド、不登校傾向、発達特性、専門的な教育環境の必要性等により、区立小中学校ではなく、私立学校等を選択する児童生徒についても、経済的理由により必要な学びの機会が制限されることのないよう、支援のあり方を検討する必要があります。

そこで下記の通り、要望いたします。

  1. 区立小中学校における学用品、教材費、校外学習費等について、義務教育無償化の理念をさらに具体化する観点から、学校教育に通常必要となる経費の公費負担を進めること。
  2. 修学旅行費、移動教室、校外学習等の費用について、家庭の経済状況により参加や経験に差が生じることのないよう、区としてさらなる支援を検討すること。
  3. 制服・標準服、体育着等の費用も学校が指定する以上は保護者負担の軽減を進めること。
  4. 学校徴収金について、費目ごとの実態を整理し、公費負担とすべきもの、保護者負担として残すもの、任意性を明確にすべきものを検討し、分かりやすい形で見直しを進めること。
  5. 学校教育費等の公費負担を進める一方で、就学援助制度については、なお残る経済的負担や個別事情に応じた支援を担う制度として再整理するとともに、物価高騰により準困窮世帯の教育費負担が増している現状を踏まえ、認定基準を生活保護基準の1.5倍程度まで拡大することを検討すること。
  6. 多様な学びの場を必要とする場合を考慮し、就学援助制度の対象者を私立小中学校等に在籍する児童生徒に広げ、経済的理由により就学に困の対象者を私立小中学校等に在籍する児童生徒に広げ、経済的理由により就学に困難を抱える世帯を支援すること。

以上




学校建て替えによる仮設校舎の整備に関する要望




令和8年6月29日
渋谷区長 長谷部 健 様
渋谷区教育委員会教育長 伊藤 林太郎 様
渋谷区議会議員 鈴木 建邦

学校建て替えによる仮設校舎の整備に関する要望

区政進展に向けた努力に心より敬意を表します。

建築費高騰と工期の延長を背景として学校建て替えロードマップの見直しが行われた結果、学校建て替えに伴う仮設校舎の追加および全体計画長期化への対応が大きな課題となっています。

当初の学校施設整備計画においては、人手不足による工期の長期化リスクが十分織り込まれていたとは言い難く、また民間活力を利用した学校整備においても事業者側の事情等により遅れを生じるなど、計画全体の大幅な見直しが必要となりました。今後はなお一層着実に学校施設整備を進める必要があります。

仮設校舎の確保にあたり近隣住民等の負担を軽減し、円滑な運営を目指すため、下記の通り要望いたします。

  1. 学校建て替えに伴い仮設校舎を整備する場合には、学校教育への影響と児童生徒の安全確保に十分配慮しつつ、体育館、校庭、教室等について、最大限地域開放を進める方針を明示すること。
  2. 特に大山公園の仮設校舎の整備については、学校で利用しない時間帯の地域利用をすすめるとともに、整備にあたっては公園との一体的な利用を前提とし、地域住民の利便が向上するよう十分配慮すること。
  3. 学校建て替え期間の長期化に対応するため、仮設校舎のさらなる増設を強く求める。特に、代々木公園等の大規模公有地の活用も含め、東京都との協議を粘り強く進めること。仮設校舎が確保できた際には、学校建て替えロードマップを迅速に見直し、①建て替え時期の早期化②老朽校舎を手直しして仮設校舎として利用する箇所の解消③別の学校と同一敷地内に仮設校舎を建てる箇所の解消、を進めること。
  4. 今後の学校施設整備計画については、不幸にも経済状況の変化により神南小学校の工期に後ずれが生じた事実を重く受け止め、堅実に進めること。

以上