
宮崎市・宮崎県のHPVワクチン施策を視察し、その深い洞察に基づいた取り組みに感銘を受けた。単なる接種率向上に留まらない、本質的な啓発の姿がそこにあった。
「マザーキラー」という脅威に向き合う
子宮頸がんは「マザーキラー」と呼ばれ、生死に関わるだけでなく、若くして妊孕性(子を授かる力)を失わせる危険がある。
また、性感染症という側面から、パートナー間の信頼毀損(「俺がうつしちゃった?ごめん😨」「誰にうつされたんだ怒🤬」の両方)や周囲を巻き込んだ紛争にも発展しかねない、極めてデリケートな疾患だ。
これに対処するには、ワクチンと検診はもとより、社会全体への「質の高い啓発」が不可欠である。社会の無理解がすべてを台無しにしてしまう。
「親子同時」の啓発が生む、地域の財産
宮崎市の中学1年生を対象とした「全校出張講座」は、保護者の参加も想定している点が極めて優れている。
HPVワクチンは「接種年代」と「リスクを実感する年代」に大きなギャップがあり、さらに性感染症ゆえの難しさから、従来の啓発にはどこか踏み込みづらい感がある。
しかし、保護者を巻き込むことで、当事者の中学生・将来の周囲の支援者(中学生)・保護者の三者の間に「共通認識」が構築される。この射程の広さは、将来にわたり広域の大きな財産となるはずだ。
宮崎市の出前講座では、子宮頸がん患者の声も動画で見ることになる。現物を見ていないので断言はできないが、悲痛な声は必ず中学生と保護者たちの心に長く残ると考えられる。この経験がHPVワクチン接種を検討する際、あるいは自分または周囲が子宮頸がんになった時、大いに活きるだろう。
接種率下位からの劇的なV字回復
宮崎県は令和4年に接種率全国最下位近辺という状態にあったが、そこからの改善が凄まじい。
県が進める学年ごとの個別通知の充実や接種場所の広域連携、啓発、そして宮崎市のような積極的な接種勧奨により、状況は劇的に好転している。この「本気」の姿勢は、渋谷区や東京都も範とすべきものだ。
「選択」への誠実さと、未来へのエンパワーメント
特筆すべきは、接種推進の立場でありながら「接種しない選択をした方向けの情報提供(検診の重要性等)」にも一部踏み出し、包括的性教育に取り組み始めている点だ。
接種義務を負う自治体にとって、接種しない選択をする家庭に理解を示すことは困難であるはずだ。ほんの一部に過ぎないとしても、情報提供に踏み出すことによって、「健康を守るためのセカンドベスト」を追求する姿勢を感じ取った。
また、小学校からの性教育も同様である。性に対する知識がなければ出前講座も前提を失う。これらにきちんと向き合うことは政治的に勇気が必要だが、真正面から取り組んでいることに敬意を表したい。
これらの取り組みが、子宮頸がん等のHPV関連疾患の減少と、こどもを持ちたいと願う方々のエンパワーメントに繋がり、結果として出生率の向上に結びつくことを強く期待したい。




