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渋谷区議会議員の鈴木けんぽうです。

4年任期の最後に、識者に寄稿をお願いし、それを次期の参考にする、という取り組みを各選挙でやっています。これは、最新の知見を導入し、理論的裏付けを得たうえで改善を図っていくために重要な取り組みだと思っています。

 

今回は、学校広報や学校評価でご示唆をいただいている、国際大学GLOCOMの豊福先生に、学校評価によってなにが達成できるのか、どこを変えるのか、について書いていただきました。

これを参考に、渋谷区の学校を変えていきます!

 

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学校評価がお荷物でない時代は来るのか

学校評価の今後の展望

国際大学GLOCOM 准教授/主幹研究員
豊福晋平

幼稚園や小中高に子どもを通わせている方なら、年に必ず1度は目にする「学校評価」。実は平成20年度からスタートした新しい制度だ。

保護者としてもっぱら目にする機会が多いのは、質問紙形式の「外部アンケート」だが、学校にとって学校評価は荷の重い仕事のひとつになっている。ほとんど手作業のアンケート集計・分析に留まらず、校内教職員で実施する「自己評価」、保護者や地域関係者の代表で組織した委員会による「学校関係者評価」をそれぞれ報告書としてとりまとめ、結果を保護者・地域に公表し設置者(区長)に報告しなければいけない。

法律で定められた制度なのに、関係者からは常に「やって意味があるのか?」批判が出やすいのも学校評価の特徴である。学校側からは「費やした労力に見合った効果が実感できない」、学校外からは「報告文言が抽象的かつ恣意的でよく分からない」とか「単なるアリバイ作りではないか」等の疑問を呈されるほど、運用面では課題が山積している。

では、それらをどのように解決すれば、学校評価から厄介者のラベルを払拭出来るだろうか? これまで複数の学校関係者評価に関わってきた立場からいくつか挙げてみたい。

 

組織改善が本来の目的

 

学校関係者でもしばしば誤解されるのだが、学校評価本来の目的は、学校を格付けすることではなく、持続的な組織改善のためにPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回すことにある。

各学校には大綱となる教育計画(教育課程届)Pがあり、これをもとに教育活動Dが展開されるので、学校評価でCA部分を担おうという設計だ。

したがって、学校課題や解決提案が具体的に出て来てこそ、このプロセスは上手く機能する。やっつけ仕事で、評価報告書欄に形式的・抽象的な文章を埋めてお茶を濁しているようでは、費やした時間を全部ドブに捨てるようなものだ。

 

教職員が学校経営視点を共有すること

教職員自己評価こそ学校評価のコアであり、学校の組織改善のために、わざわざ保護者や関係者評価委員を付き合わせるのが学校評価なのだから、教職員が組織改善のための学校経営視点と当事者意識を持つ事はことさら大事だ(それが学校管理職にとっても難しい事は承知の上だが)。

教職員の当事者意識が高ければ、必ず的確な課題指摘とそれに対する有効な改善提案が出てくる。一方、評価を厄介者扱いするほど志気は下がり、自己評価のコメント欄は愚痴ばかりになりやすい。

 

評価報告が教育活動のエビデンスになるように

学校にとってみると、評価報告はあまり有難くない文書だが、逆手にとってみれば、学校が一年間様々な課題に直面しつつも調整や工夫を繰り返してきた軌跡を公的文書として記録する貴重な機会でもあるということだ。

特に、自己評価や外部アンケート結果に対する考察を真面目にやれば、結果数値に表れた傾向に対して、学校での具体的エピソードを重ねて説明することが出来る。

これは学校側当事者でなければ出来ない仕事だし、具体的エピソードが紐付いていないと、関係者評価委員も学校の対応を正当に評価できない。

 

情緒のかわりに根拠と論理が必要

有効な組織改善のためには、具体的な論拠とロジックが必要だ。

評価報告書に求められるのは、主に次の4点である。

  1. 実態:何が起こっているのか
  2. 経緯:どのような取組みがなされてきたか
  3. 考察:課題や成果があるとすれば何が原因や背景か
  4. 対処:次に何をすべきか。

例えば、評価報告では、実態も経緯も考察も記されていないのに、単に「しっかり対応していく」とだけ書かれていることがある。これでは関係者評価委員も妥当性の判断が出来ないし、おそらく評価報告自体も有効に扱ってもらえない。

憂慮すべきは、先に述べたような論文作法に慣れている人が少ないことで、学校側で文書作成出来るようになるまでは、学識経験者等が支援することも考えるべきだろう。

 

データ利用を前提とした評価

仮に学校評価において、重点目標や各領域で①から④の情報全てを揃えようとすれば、かなり大変な作業になることは明らかだ。

外部アンケート結果以外には、例えば、財務諸表、標準学力調査、生活実態調査、体力調査、出欠状況などから必要なデータを引き出し、正確に分析・考察して学校評価にインプットする必要がある。

しかしながら、従前の学校では、このような膨大な情報量を効率良く扱う枠組みが整っていない。先に挙げた諸票は全部形式がバラバラなうえに、校内で課題指摘や改善提案について検討が行われても、議事録を残す習慣自体がなかったりする。こういった事柄は、マメにメモを残しておかないと評価に反映できない。

また、アンケート処理を担任の手作業(正の字を書いて集計する)に頼っているケースも多い。せめて、アンケート集計やデータ考察部分だけは外注するとか、負担軽減を図る必要があるだろう。