
渋谷区議会議員の鈴木けんぽうです。
初台にある保育園・病児保育・医療機関の複合施設「おやこ基地シブヤ」は渋谷区に寄付された土地に定期借地権30年を設定し、認定NPO法人フローレンスさんのグループが補助金を活用して施設を建設したうえで運営しています。
ここ最近
- 賃料が安すぎる、利益誘導ではないか
- 障害児保育が撤退したのは問題ではないか
との指摘が相次ぎましたので、議会改革の会の会派として須田議員・矢野議員とともに所管課にヒアリングを11月7日に行いました。その内容を公開いたします。
(注)ヒアリングの一部(主に事業者にかかわる情報のうち未公開の部分)は「公開しない」との約束で聞いているので非公開です。また、後日取得した情報をもとに一部補足しています。
<契約当時の妥当性>
・(ヒアリング内容)当時の募集はH28.5の寄付者の意向である「福祉」に沿ったものである。
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(見解)児童福祉の用地となったのは、当時の待機児童数が266人と非常に高水準であったことを踏まえると当然と考えます。
・(ヒアリング内容)プロポーザルの要綱では①保育所(認可保育園・認定こども園・小規模保育事業の運営経験が必要)②医療機関併設の病児保育を含むことが要件であった。
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(見解)確かに他の保育施設と比べて要件は緩いが、病児保育の要件がそれにも増して厳しい(病児保育の事業者が当時極めて少なかった)ためそのこと自体が問題とまでは言えません。
・(ヒアリング内容)募集期間については短期間(H28.8.8-8.22)であるが渋谷区のプロポーザル実施要項の最低日数14日間であるので問題はない。また他のプロポーザルでもしばしばみられる。(補足)当時の他の保育所のプロポに関しても募集期間は2週間で行っているとの話があった。
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(見解)参入障壁となりうるものであり、より長い期間設定が望ましいが、当時の待機児童等の状況を考えるとやむを得ないものと考えます。
・(ヒアリング内容)フローレンス等については要綱にのっとった応募である。
・(ヒアリング内容)賃料については①病児保育・障害児保育・認可保育園部分については無償(渋谷区の他の保育施設でも実例有)。②医療施設部分は路線価を用いて区規則(路線価をベースとした公有財産表の価格×延べ床面積割合×1000分の2.5※)にのっとって算定されている。不動産の鑑定評価はコストがかかるため大型プロジェクトのみ使う。
※不動産価格から賃料を計算する料率。価格の3%/年。
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(見解)路線価を用いるなど実勢価格とは乖離が見込まれるものの、他の区施設と同水準であり妥当です。
・(ヒアリング内容)30年の定期借地権を導入したことについては事業者に一定の資金やリスク等を負ってもらうもの。
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(見解)保育施設も病児保育施設もできるだけ長期継続して運営してほしいところ、30年の期間を設定することで事業者の運営も安定するため妥当といえます。
<運営の妥当性>
・根抵当権が設定されていたことについて:
(ヒアリング内容)区に対して「抵当権」の承諾依頼があり承諾したものであるが、根抵当の承諾ではなかった。国からも通知が出ており、令和5年の「子ども・子育て支援施設整備交付金」の質疑応答集でも「設定できない」と記載がある。現在所管の官庁に問い合わせをしているとのこと。
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(対応・見解)これは大問題です。承諾の範囲を逸脱して勝手に根抵当権が設定されることなんて信じられません。決められた手続きにのっとり、速やかに是正するよう催告すべきと要望しました。なお補助金額の返還、最低でも根抵当を設定できたことによって得た経済的利益相当額の返還は求めるべきと考えています。
また、区ではありませんが、通常考えられない逸脱をしたフローレンス側には速やかな適正化とともに原因を究明・説明するほか、関係者の処分なども厳正にやっていただきたいところです。
・障害児保育(児童発達支援事業)の撤退について:
(ヒアリング内容)①もともとのプロポーザルの要件には入っていない②通常の手続きと同じで、東京都に相談→閉園決定→渋谷区に通知、という流れであった③利用者は渋谷区、中野区在住者であった。いずれも転園等に同意している。
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(見解)将来にわたり利用ニーズは一定あったことは間違いないので、閉園の判断は極めて残念です。とはいえ、プロポーザルで求められたもともとの要件ではない独自提案部分であり、コロナ以降の社会情勢の変化(ほかの受け入れ施設の増加など)もあるので、事業者側の判断は許容せざるを得ないでしょう。
プロポーザルを経たものでかつ定期借地権の設定を伴うものであるため、事前に渋谷区との調整を密にすべきであったのではないかとは思います。
なお、閉園に伴う空きスペースを活用した医療機関の「発達相談」「不登校外来」「心療内科」は社会的な意義が大きいと考えられ、また小児科・認可保育園・病児保育とのシナジーも相当あるだろうと考えています。一部保険外のものもありますがこれは制度上やむを得ないと思います。
<この事業の所管外の事項についての留意事項>
・プロポーザルについて最短14日というのは短すぎないか。期間をもっと確保すべきではないか?(契約)
・本件のような抵当権等の設定において、必ず確認プロセスを入れるべきではないか?また本件を契機に既決のものがあれば一度すべて再確認が必要では?(資産管理)
・賃料計算等について見直し財源確保に努めるべきではないか?(資産管理)
<私の立ち位置について>
議会改革の会は会派の理念として「政策面ではそれぞれの考えを尊重する」としており、それぞれの議員で考えが異なります。
そこで立ち位置について書いておきます。
私は基本的に子育て教育を重視しており、本件でも将来も含め利用者のこどもたちや保護者達が困らないこと、安心して保育等サービスを享受できることを最重要と考えております。
フローレンスさんにあっては、不適切な部分をきちんと是正し、健全化のためにしかるべき措置を行ったうえで、こどもたちのために全力を尽くしていただくようお願いします。
また、障害児保育については上では「判断を許容せざるを得ない」と書いたけれども、できれば復活するか近隣に同様の施設を開設するよう求めたいです。



