
渋谷区議会議員の鈴木けんぽうです。
5月18日から20日にかけて、若手議員の会OB会(昔の若手です…)の研修で大分県へと視察に行ってまいりました。そこで体験した事例をもとに、これからの渋谷について考えたことをレポートします。
第一弾は観光です。
ご鎮座1300年を迎えた八幡総本宮・宇佐神宮へ
大分県宇佐市にある宇佐神宮は、全国に約4万社ある八幡社の総本宮であり、2025年にご鎮座1300年を迎えた歴史ある神社です。単なる観光地というより、日本の神仏習合や地域文化を今に伝える、非常に重みのある場所でした。
今回の視察で特に刺激を受けたのが、この宇佐神宮と伝統芸能を活用した「超高付加価値観光」の取り組みです。
講師の小野辰浩氏(観光庁 観光地域づくりマネージャー)から紹介された富裕層向けプログラム『The Folklore of KAGURA 7』は、1組(最大6名)あたり440万〜550万円という驚きの価格設定。貴族籍を持つような海外のセレブリティや、著名ブランドのデザイナーといった世界的なインフルエンサー層をも惹きつけています。

“豪華さ”ではなく、土地の精神性に価値を置く
ここで重要なのは、単に「豪華な食事」や「特別待遇」を提供しているわけではない点です。
むしろ、参加者に提供されるのは「肉を断つ(精進潔斎)」などの厳しい伝統儀式。神楽師と同様の生活を送り、1週間の稽古を重ねる。演舞を終えた後に食べるのは質素な「おにぎり」です。
派手な贅沢ではなく、その土地に受け継がれてきた文化や精神性に触れること、神楽師の生活と魂に触れる体験、そして実際に舞台で披露する一連に対して参加者は数百万円の価値を見出します。そして深い感動を持って帰るそうです。
こうした超富裕層の来訪には、主治医やスタッフなど数十名の「随行員」が同行することもあります。地域のホテルが一棟丸ごと埋まるなど地域経済への直接的なインパクトも大きいと感じました。一方で「ヘリポートはあるか?」という問い合わせに対応に苦慮したというエピソードもあり、高付加価値観光を受け入れるためのインフラ整備という課題も見えてきました。
渋谷は「にぎわい」として消費されていないか
観光というと、どうしても「来訪者数を増やす」「イベントを打つ」「無料で見せる」といった方向に進みがちです。しかし、それだけでは地域の価値が消費されるだけになってしまう可能性があります。
これは、人口減少が進む地方に限らず、我が街・渋谷にとっても極めて重要な視点ではないでしょうか。
渋谷には、スクランブル交差点、ハチ公、代々木公園、明治神宮周辺、原宿・表参道、恵比寿、代官山など、世界的にも知られる場所が数多くあります。 一方で、これまでの渋谷の観光は「無料で見られるもの」「通過するだけのもの」「にぎわいとして消費されるもの」に偏りがちではないか、という問題意識を私は持っています。
昔から「渋谷は客単価が低い街だ」と揶揄されてきました。かつては年齢層が低いことによるものでしたが、今は大勢のインバウンド観光客が訪問する。そして、ほとんど消費をすることなく帰ってしまう街になっています。
たとえばハロウィンのように、悪い意味で渋谷の知名度を高め、地域住民や事業者に大きな負担をかけてきたものもあります。深夜まで路上で楽しむといえば聞こえはいいですが、ほとんど消費をすることなくいろいろな問題だけを残していきます。お店もトラブルを怖がって早じまいするくらいです。
普段でも、夜間は特に路上で酒盛りを楽しむ方が街を汚していきます。路上飲酒規制は強化したものの、すぐに無くなるわけではありません。
今渋谷で人気なのはスクランブル交差点、それほど高くないチェーンの飲食店。そして量販店ですよね。それぞれが悪いわけではありませんが、渋谷の「安く楽しめる」という性格を端的に示していると思っています。
輪をかけて、東京都は「夜間に遊べる場所が足りない」と代々木公園に夜間も楽しめる噴水を工事中だったりします。
「人が来るまち」から、「価値が伝わるまち」へ
これからの渋谷の観光に必要なのは、単に人を集めることではなく、渋谷の価値を高めることだと思います。
「誰でも無料で楽しめるにぎわい」だけでなく、渋谷の歴史、文化、産業、芸術などを丁寧に伝え、その価値を理解してくれる人に届ける仕組みが必要です。もちろん、手軽に利用できる都市インフラも魅力でしょうですが、それ一辺倒では自ら価値をディカウントすることになりかねません。
特に、オーバーツーリズムに近い状態が渋谷にも起こっています。住宅街にまで観光客が染み出していくのは、生活を破壊することと同義です。
以前の視察先である大分県大洲市の「1泊100万円のキャッスルステイ」も同様ですが、宇佐で学んだのは、地域資源を守りながら持続可能な経済をつなげる挑戦でした。
世界中から人が集まるまちだからこそ、自分たちのまちの価値を安売りしない観光戦略を。今回の視察は、渋谷の観光政策について改めて考えさせられました。




