渋谷区議会議員の鈴木けんぽうです。
きてくださってありがとうございます。
東京都議会議員選挙、渋谷区の選挙公報が出てきましたので、各候補者の政策を分析します。参考にしたのは主に選挙公報、そして何を削ったかを調べるために個人ウェブサイト。背景として議会等の発言や議事録も参照しています。
なお、人物紹介についてはこちらをご覧ください
目次
総評
論点は特になし。コロナ対策やインクルージョン、子育てが主要テーマになり、教育、防災などが薄い
論点になりそうなところに触れた候補者が羽田新ルートの反対表明をした中田さんだけでした。論争というより政策カタログから選ぶような選挙になりました。
主要政策ジャンルのうち「コロナ対策」は前田さん以外の方が入れています。またインクルーシブとか「自分らしく」のようなキーワードも前田さん以外の方が掲げる形。あとは保育子育てが主要かな。
「教育」「防災」についてはとても薄い状態なので、特に関心がある方は各候補者に尋ねてみるのがいいかなと思います。私は教育政策にとても力を入れているので、今回の状況はとても悔しいです。
本記事は鈴木けんぽうが公表資料のみを参考に作成したものです。間違いなどあればご連絡いただければ幸いです。極力公平に評価するようにしてはいますが、関係性などが左右している可能性もありますのでそのあたりはご容赦ください。
<各候補者の寸評>
中田:ウェブサイトから修正。悩みの跡が見える
一般的には、文字数が多く先行してかけるウェブサイトにいろんな政策を書いて、そこから主要政策を選択して選挙公報に掲載するものです。
ところが、中田候補はサイトに書いていないことも書き込んでいて、直前まで悩んだ様子が伺えます。これを「最後まで努力をしている」とみるか「計画性がない」とみるかで評価は大きく変わりますね。
羽田新ルート反対を別枠で強調しているのは特筆すべきです。ウェブサイトでは広尾病院の独法化に反対も表明していて、地域の争点に向き合う姿勢を示しています。そのあたりを重視する方は投票する動機になりそうです。
新型コロナウイルス感染症対策、多様性、出産支援、子育て支援、地域活性化、環境政策、無駄の削減、という順番で政策ジャンルを列挙していますからこの順に力が入っているといえます。残念ながらスローガンにとどまっているので具体的な内容はウェブサイトを見ないとわからないですね。
長妻代議士のメッセージが全体の8分の1程度。本文やプロフィールにも名前があり、長妻代議士との関係を強くアピールしています。
前田:こだわりの政策を前面にすえつつ戦略的展開
前田候補は重点政策を3点に絞ります。自転車の政策、奨学金の負担軽減、福祉施設の整備促進と、渋谷区議時代からこだわってきた政策を前面に押し出した形です。
他の候補者は10代後半~20代前半までの世代に向けた政策はぽっかり抜け落ちているのと対照的に、前田候補の選挙公報はこの世代とその親をターゲットにして選挙公報を作ったと言えそうです。今小中学生の子を持つ方も将来的な教育費負担は気になるところなのでその辺もカバーするでしょう。
自公推薦の組織力をバックにいわゆる地上戦を戦い、選挙公報は自分のこだわりの政策を打ち出しつつ「政治色のうすい若手社会人にアピールする」というメリハリをつけているのならば、流石やりての前田候補といえそうですね。
多数の有権者が興味を持つ高齢者福祉についても前面に押し出しています。全体として手堅い作り。自民公認公明推薦を目立たせ、自民党区議団の似顔絵を配置して固める選挙を象徴しています。手堅い政策推進を求める方は前田さんかなぁ。
大津:多彩な政策スローガンを勇ましく飾る
原点がはっきり書いてあるところが面白いです。それも含めて水道料金値上げ、感染症対策、安全安心、子育て介護健康、経済対策、環境政策、日常事故防止、東京の魅力発信と多彩だなぁと。
ただそのために何をしたいのか読み解きづらくなっていて「世界一!」とか「だれ一人取り残さない」とか勇ましいフレーズと相まって「なんかすごそうだけど…?」という感じで終わる方も多いのではないかなぁと想像してしまいます。
私が見る限り、大津さんはライターの安全とか折りたたみいすの事故防止とかそういった生活安全方面に力を尽くしてきた印象があります。警察消防委員長に抜擢されたのもそのような文脈なのかなと想像するところです。生活安全や地域課題の解決を政治家に求める方はこちらを見るのかな。
小池都知事のメッセージは小さめ。
龍円:実績と知事・区長アピール、独自の提案
唯一実績が載せられている龍円さん。自己アピールなので8割差し引いて考えるとしても、ちゃんと実績を載せているのは素晴らしいと思います。この中で「それいいね!」と思うものがあれば評価の一つにできますね。
「インクルーシブ公園」と「地下鉄の子育て応援スペース設置」の二つは考え方そのものの見直しにつながるのでいい仕事だなと私は思います。
政策提案はコロナ対策、水道道路沿道まちづくり、屋内こども遊び場、異世代交流の場、公園整備、都営住宅の福祉機能強化と割と独自のアイディアの提示ですね。逆に言えば王道の政策はほとんど書かれておりません。「新しいことしたいな」という方にはマッチするかもしれません。
小池都知事と長谷部区長のメッセージが大きく入っていますが具体的内容としては「政策コンテストで一位(インクルーシブ公園)」というだけでなんかもったいない感じもします。オンライン対話を重ねたとかいろいろあるはずなので…
もし、「ここまで読んでもよくわからない!●●政策について重視するならだれ?」みたいなご相談があれば質問箱をお使いください。できるだけ中立的に答えますね!
<資料>
選挙公報
中田
- 強調:羽田新ルート反対
- 新型コロナウイルス感染症対策(PCR強化、保健所体制強化)
- 多様性(ジェンダー、障がい)
- 出産支援
- 子育て支援
- 地域活性化(防災含む)
- 持続可能な社会(CO2削減、省エネ促進、再生可能エネルギー活用)
- 無駄の削減(優先度による予算付け)
前田
- 自転車ルールの周知徹底
- 奨学金負担軽減
- 介護施設整備
大津
- 原点:水資源、水道料金値上げ問題
- 感染症対策(東京発ワクチン、公衆衛生都市)
- 防犯防災
- 福祉(子育て介護がん対策医療政策)
- 経済政策(雇用、中小企業)
- 日常事故防止
- 東京の魅力発信(文化芸術スポーツ自然)
- 龍円
- 感染症対策
- 水道道路沿道のまちづくり
- 屋内遊び場
- 異世代交流の場
- 公園整備
- 都営住宅の福祉機能強化
ウェブサイト
中田
- 新型コロナウイルス感染症対策(PCR強化、中小事業者支援、医療機関支援、ワクチン接種、保健所体制強化)
- 多様性(ジェンダー、ヤングケアラー、認知症、特養ホーム、インクルーシブ教育、インクルーシブ公園)
- 出産(AYA世代がん、不育症、妊婦検診拡大、産後うつ対策)
- 子育て(ささえあい、病児病後児保育、18歳までの医療費無料化、養育費不払い対策、少人数学級、学校給食無償化)
- 地域活性化(都立広尾病院の独立行政法人化反対、まちづくり、区内交通、羽田新ルート反対、客引き取り締まり、ネズミ対策、カジノ誘致反対)
- 持続可能な社会(再生可能エネルギー活用、公園学校の天然芝生化、プラスチック削減と循環型社会への転換)
- 無駄の削減(優先度による予算付け、広聴システム、都区財政調整制度見直し、有休都有地の活用)
前田
(政策動画)
- 奨学金負担軽減
- スマホ携帯電話料金引き下げ
- 産休育休
- 保育料完全無償化
- 介護施設整備
- 小児がん・難病対策
- 自転車、道路整備
- 中小企業振興
サイト
- 部活動・プロスポーツ充実
- 事務事業評価の活用
- コロナ対策
- ICT教育
- 震災対策・備蓄強化
- 代々木公園の機能更新
- 在宅・施設介護整備
- 介護保険法の改正
- 自転車対策
大津
(出陣式動画)
- 気候変動
- 子育て介護
- コロナ国産ワクチン、衛生
龍円
- コロナ対策
- インクルーシブ
- 水道道路沿道まちづくり
- こども
- ジェンダー平等
- 公営住宅改革
- インクルーシブ公園
- 屋内遊び場
- 体を動かし交流する公園
- 長寿を楽しめる社会(老々介護や介護離職対策)
- スペシャルニーズに寄り添う
- 交流促進
- 子育て応援
- 子育て応援スペースのある電車拡大(多胎児・子連れ)
- インクルーシブ教育推進
- 持続可能で循環型の環境
- 運動・スポーツの振興
- ソーシャルファーム(困難のある方の就労支援)
- クリーンでアートな街づくり
- オンライン申請
- 中小企業飲食店支援
- 緑や花を増やす
- 代々木公園の温存
整理
●重要政策(一般的に関心が高いといわれるもの)
コロナ対策
中田・龍円が優先課題に、前田は情報提供と中小企業振興、大津は国産ワクチン支援
高齢者福祉、介護
中田・前田・龍円・大津
前田は介護保険改革も述べていて、強い決意を感じる。ちょっとびっくり
出産子育て
中田・前田・龍円・大津
教育政策
前田のみ(ICTの活用、部活)
(中田・龍円はインクルーシブ教育なのでこちらには含めず)
(前田・龍円はスポーツ振興も)
防災
前田のみ
環境
中田・龍円
交通政策
中田・前田(前田は自転車も)
多様性
中田・龍円
地域の争点
羽田新ルート・広尾病院独法化はどちらも中田のみ(反対の立場から)
●ウェブサイト寸評
中田
新型コロナウイルス感染症対策と出産・子育てに重点
また地域の争点になりそうなところを唯一おさえている
前田
オールラウンド型。というかほかの候補者が網羅してない感じがする
その中でも子育て教育については負担の大きいところを対策する視点に立っていて実務的
大津
都議選政策がよくわからない
選挙の動画を見て判断するしかない感じ
龍円
障がい者・ジェンダー関係などのインクルーシブ、こども政策に重点
まちづくりの観点からの提案も多い(水道道路沿道など)
- 投稿タグ
- 中田たかし, 前田和茂(前田かずしげ), 大津ひろ子, 都議会議員選挙, 龍円あいり